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ずっと君を愛してる

第13章 告白

べつに飲むことが好きなわけではない。マスターが偶然写真好きだったことからこの店に通うようになった。
早く帰っても誰かが待っているわけでもない。仕事が早く終わったり、ミスをして落ち込んだ日はここで少し時間をつぶして帰る。
いつの間にかひとりで過ごすのがうまくなった。

「これ何ていうカクテル?」
「…カミカゼ」
「へぇ…」
「切れの鋭さが神風特攻隊を思わせるんだって」
「ちゃんと意味があるのね、カクテルって」
「面白いだろ?」

みゆきがグラスを上げて、乾杯と言った。この店で誰かとグラスを合わせるのは初めてだ。

「瀬川くん」
「ん?」
「さっき関口くんが言ってたことだけど」
「うん」
「…やっぱり瀬川くん雰囲気変わったよ」
「そうかな?どう変わったの?」
「話し方とか…すごく大人っぽくなった、っていうか。正直、みんなの中で一番落ち着いて見えた」
「何だそれ。聞いてて恥ずかしいよ。でも、ありがと」
「…何かあった?最近」
「…ないよ。何も」

隠す必要はない。でも、話す必要もない。たとえみゆきでも。

「ニューヨークに行ってたの?」
「あ…うん。仕事でね」
「さっき、瀬川くんのうちで、見ちゃった。鞄のタグ…」
「そっか…」
「静流は、元気だった?会ったんでしょ?」
「…元気そうだった。すごく…きれいになって…びっくりした。」
「瀬川くんが変わったのって、静流に会ったからなんだ?」
「そういうわけじゃ、ないと思うよ」

ぼくはみゆきが探りを入れているとも気付かずに正直に答えていた。

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