ずっと君を愛してる
第17章 希望
「君が撮った写真が、何枚かあった。驚いたよ。Makoto SEGAWAって君だろ?」
ほら、とベルクールが開いたところには、この写真集にはふさわしくないモノクロの静流の笑顔があった。
どうして、こんな写真が。
「…いい表情をしている。君は気難しい日本人かと思っていたが、そうじゃないんだな」
「…どういう意味ですか?」
「自分のことはあまり話さないし、聞いたことにしか答えない。…いや、それはいいんだが。着ているものはいつもモノトーンで、趣味もまるでわからない。でも、この写真を撮った君は生き生きしていたはずだ。こんな笑顔を引き出すことができる…まぁ、生きていれば色んなことがあるけど」
何もかもが楽しかった頃。無責任に無邪気に笑っていられた頃。誰かを想って苦しんだり、後悔することもなかった頃。その頃に撮った写真だった。
「撮りたいのは、何だ?」
自分の部屋に帰っても、ベルクールの言ったことが頭から離れなかった。
こんなところまで、来る必要はなかった。
あの頃ぼくは、たったひとりの笑顔を撮るためにカメラを構えた。そこに未来を見ていた。いつの間にかそれが写真を撮る理由になっていた。ぼくの世界の全てが、静流だった。その世界を失ったぼくは、カメラを持ったまま自分の中から全ての色彩が消えていくのを感じた。
わかっていたことなのに。
飛ぶための羽を持った蝶がひとところにとどまるわけがないのに。
それでもぼくは、写真をやめることができなかった。君とつながっていたくて。君と出会えた写真を、大事にしたくて。
「君が撮りたいのは、命のあるものじゃないのか?…こんなに、いい写真を撮ることができるのに」
そうだよ。
ほくが撮りたいのは。
写真集は最後、静流が二人の子どもに両側からキスをされている作品で終わる。静流に似ている。そしてこの子どもたちにぼくは、懐かしさと同時に初めて静流の写真から未来を感じた。
どのくらい眺めただろう。背景に気付いて思わず声をあげた。そこは大学時代ふたりで住んだ、あの家だった。
ほら、とベルクールが開いたところには、この写真集にはふさわしくないモノクロの静流の笑顔があった。
どうして、こんな写真が。
「…いい表情をしている。君は気難しい日本人かと思っていたが、そうじゃないんだな」
「…どういう意味ですか?」
「自分のことはあまり話さないし、聞いたことにしか答えない。…いや、それはいいんだが。着ているものはいつもモノトーンで、趣味もまるでわからない。でも、この写真を撮った君は生き生きしていたはずだ。こんな笑顔を引き出すことができる…まぁ、生きていれば色んなことがあるけど」
何もかもが楽しかった頃。無責任に無邪気に笑っていられた頃。誰かを想って苦しんだり、後悔することもなかった頃。その頃に撮った写真だった。
「撮りたいのは、何だ?」
自分の部屋に帰っても、ベルクールの言ったことが頭から離れなかった。
こんなところまで、来る必要はなかった。
あの頃ぼくは、たったひとりの笑顔を撮るためにカメラを構えた。そこに未来を見ていた。いつの間にかそれが写真を撮る理由になっていた。ぼくの世界の全てが、静流だった。その世界を失ったぼくは、カメラを持ったまま自分の中から全ての色彩が消えていくのを感じた。
わかっていたことなのに。
飛ぶための羽を持った蝶がひとところにとどまるわけがないのに。
それでもぼくは、写真をやめることができなかった。君とつながっていたくて。君と出会えた写真を、大事にしたくて。
「君が撮りたいのは、命のあるものじゃないのか?…こんなに、いい写真を撮ることができるのに」
そうだよ。
ほくが撮りたいのは。
写真集は最後、静流が二人の子どもに両側からキスをされている作品で終わる。静流に似ている。そしてこの子どもたちにぼくは、懐かしさと同時に初めて静流の写真から未来を感じた。
どのくらい眺めただろう。背景に気付いて思わず声をあげた。そこは大学時代ふたりで住んだ、あの家だった。