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ずっと君を愛してる

第6章 君は君で

静流は細い脚にぴったりしたジーンズにピンク色のセーターに着替えてキッチンでやかんを火にかけた。

「コーヒーは、まだだめ?」
「いや、飲めるようになったよ」
「うわぁ!誠人も大人になったんだ!」
「静流には負けるよ」

うれしそうに静流はぼくの隣に座った。

「ね、誠人。今日は一緒に寝よう?」
「う、うん。いいよ」

静流はやったぁと言いながらぼくの腕に絡み付いてきた。髪からはぼくの知らない静流の香りが漂ってきた。

「本当に、変わったんだな。どこもかしこも」
「あれもこれも!」
「へぇ~」
「『へぇ~』ってそれだけ?」
「それだけって…?」
「ドキドキする?」
「んー…まぁ」
「キスしたくなった?」
「それは…」
「ヌード写真撮りたくなる?」
「いや…」

煮え切らないぼくの返事に静流はぷうっと膨れ、膝を抱えてぼくに背を向けてしまった。

「…怒った?」
「怒ってない」
「じゃあなに」
「せっかく大人になったのに」
「何言ってるんだよ。さっきから」
「何でもないっ!」
「…よかった。静流だ」
「え?」

振り返った静流は今にも泣きそうだ。
一緒にいたころも、すぐに機嫌をそこねてぼくに背を向けた。あのビーンズクッションの上で。ぼくが、みゆきのウェディング展につきあうと言った日の夜もそうだったな…。

「静流」
「…」
「急にきれいな大人の女性になってぼくのまえに現れて、びっくりするのも当然だろ?それなのに静流は『キスしたい?』だの『ヌード写真撮りたい?』だの、ぼくはそんなことばっかり考えてないよ?」
「だって…」
「ん?」
「誠人は男の子でしょ」
「そうだよ」
「前みたいな私じゃ、エッチなことも考えられなかったでしょ」
「それは…」
「ほら、答えられないじゃない。だから聞いたの!今の私になら、そういう妄想抱くでしょ?って」

そのときタイミング良く、なのか悪くなのかやかんがピーッと音をたてた。

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