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愛に生きる

第1章 春

火照った体で一人で帰路につきながらコンビニに寄った。

缶ビールを一本買ってその場で煙草に火をつけながら、味わうこともなく思いっ切り喉に流し込んだ。

酔いでモワモワした感覚と夜の静けさ。そして、言いようのない孤独感。
このごちゃごちゃした不思議な感覚でコンビニの前に座り続けるのが気持よかった。

まだ大学生活も始まって一カ月というところなのだが、僕は何をしているのだろう?

定期的に湧いてくるこの虚無感が逆に快感で煙草にいくつ火をつけたろうか、突然女の声がした。


「福…山君?…だよね?」


その声の主は紛れもなくふっくらした顔のぽっちゃり女で、一重か二重かわからないような細い目だった。

大学一年生、4月。

全く気にもかけなかった春川愛。
名前さえもその時知らなかった。

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