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そばにいて、そしてキスをして

第3章 始まり

「あ…電話」

真緒はバッグの中を探り、紙を探した。

「090―xxx…」

ワンコールして、思い直して真緒は電話を切った。…ダメだダメだ。恥ずかしすぎる。まともに話せるわけがない。
その時、まさにいまプッシュした番号がディスプレイに表示された。倉沢だ。

「もし…もし」
『…桜井さん?』
「はい…あの、すみません!昨日は…」
『良かった…無事だった…』
「え?」
『心配で、朝から店を見に行ったんです。そしたら定休日だし、連絡先も知らないし』

心配されていたことを知り、真緒は何と言えばいいのかわからなかった。しかも、店まで…

『桜井さん?大丈夫ですか?』
「あ、はい。ごめんなさい、ご迷惑をおかけしてしまって」
『いや、僕の方こそ。送り届ければ良かったのに、眠ってしまった。すみません』
「そんな、倉沢さんが謝らないでください!!」

眠っているあなたにキスをしてしまいました!とは言わなかったが、気がつくと真緒はベッドから立ち上がって大きな声を出していた。

「ごめんなさい…」
『桜井さん』
「はい……?」
『今からランチに行きませんか。1時間後に、ランニング中にお会いしたあたりで』
「は、はい!」

そう言って電話は切れた。

…また、会える。

真緒は勢いよくカーテンを開けて、バスルームに向かった。

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