テキストサイズ

そばにいて、そしてキスをして

第5章 そばにいて

ふたりは、今朝まで並んで眠っていたベッドにたどり着いた。
倉沢は真緒をそっと横たえ、真緒の上に覆い被さった。唇を合わせたまま倉沢はブラウスのボタンを外していったが、何度も外し損ねた。その度に真緒は優しく倉沢の背中に腕をまわした。
どこにも隙を見せなかった倉沢が少年のように焦り、自分を求めている。それだけで真緒の心は感じた。

「……真、緒……」

かすれる声で呼ぶ声が、
確かめるように体を這う長い指が、
キスするたびに、真緒の額にこぼれてくる柔らかい髪が。
何もかもが、いとおしくて。

「……倉…沢さ…んっ……」
「名前で、呼んで…」
「……貴、司…あ……っ」

途切れる声が、切なさを強くした。

きっと、私たちは心に空いた穴を埋めようと必死なんだ。誰にも、言えなかった心に空いた穴。

「「そばにいて……」」

ふたりは同時につぶやいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ