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そばにいて、そしてキスをして

第2章 変化

倉沢も真緒と同じタイミングで気づいたようで、ペースを徐々に落とした。

「八百屋の…」
「桜井です」
「あぁ、桜井さん…こんにちは。この間は…」

倉沢は足を止め、汗を拭いた。ウェアが汗を吸っているところを見ると、かなり走りこんできたようだ。

「お近くですか」

倉沢は、一段と濃くなった桜の葉を見上げて言った。横顔が、すごくきれいだ。

「あ、はい。すぐ近くです。大通りの南側の」
「じゃあうちの近所かも知れないな。あ、そうだ今日はお店、休みでしたね」

倉沢は川沿いに等間隔に設けられたベンチを指差した。
真緒はすこし間を空けて座ったつもりだったが、半袖から伸びた腕から倉沢の体温が伝わってきた。意外なほど筋肉質で血管の浮き出た腕。

「朝から、お店に行ったんです。そしたら定休日でした」
「あ、そうだったんですか。すみません、水曜日と日曜日は休みなんです」

倉沢は持っていたペットボトルのスポーツドリンクを飲んだ。上下する喉が視界に入った。

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