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G線上のアリア

第2章 家族になろう





「転校生を紹介する…」

そう言って案内されて入ってきたのは、職員室で別れたばかりだった朔夜だった。
朔夜は違うクラスだと、まだ慣れなくて不安だと言った所を、担任だった楠木が迎え入れたのだ。
入ってきて目が合うと、朔夜が嬉しそうに片目を閉じて魅せた。一瞬にして、呆然と思わず朔夜を見やる夢叶。
「八代朔夜…好きな食べ物はバナナとチョコレート。プリンとか甘いのが好きです。死ぬほど嫌いはピーマン!!身体動かすのが好きで得意はダンクシュート」
きっぱりと言い切り、担任を振り返ると空気に呑まれたのか唖然として、それからわざとらしく咳払いをした。
「……コホン。…席は、一番後ろの廊下側だ」
「はい」
夢叶が座る席から考えると真逆に等しい席へと向かう朔夜。まっすぐな背筋と、整った顔をしている。男子校でなければ、きっと女生徒がざわつくだろう。いや、実際この学校の姉妹校であるアリス女学の生徒が、幾人も振り返っていたことを思い出して苦笑する。
「一条…」
「はい?」
きょとんと立ち上がった夢叶に、従兄弟なら案内してやれよと言われ、勿論言われるまでもないと思いながらも静かに「はい」と返答を返した。



やはり思ったとおり。
朔夜は朝のホームルームが終わると同時に、側に居た生徒が興味津々で集い。それは休み時間を隔てるごとに人を増やしていた。そして帰って二人はにゅーめんを仲良くつついて週末を過ごした。おりしも金曜日に始業式だった。

月曜日はやや憂鬱を隠して登校し、遠くから眺める形になっている夢叶の周囲には人はまったく居ない。

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