G線上のアリア
第1章 雪の日
G線上のアリア
「今日から一緒に暮らす朔夜(さくや)くんですよー」
雪が静かにちらついていた最中、ゆっくりと開かれた扉の向こうで、冷たい横顔が雪に掻き消えてしまいそうに見えた。
きつく据えられた瞳と、笑みを形取ることもなく引き結ばれた唇。印象という強い残像を残し、彼は―――八代朔夜は家族の一員となった。
「お帰り、お母さん………。俺が夢叶(ゆうと)。夢が叶うと書いて夢叶というんだ」
手を差し出したのは、この一条家の嫡子である夢叶という細く白い肌をした二人の出会いの瞬間だった。
白い雪が舞い散り
花弁のように
降りしきる中で
雪の淡さで笑顔を寄せる
白い綺麗な花を見つけた
「玄関は寒いですよ…入りなさい」
「父さん…」
夢叶の後ろに立ち止まったのは、黒ぶちの眼鏡の奥まで温和な光を称えた笑みを見せる一条廉。穏やかで市立の高校で歴史の教師だ。
家族として加わる朔夜は、深く頭を下げた。
「今日からお世話になります…八代朔夜といいます」
淡々とした口調と、静か過ぎる空気がひんやりと流れた瞬間(とき)。廉の妻であり、夢叶の母親は朔夜の背中を強く押した。
「寒いから早く中で暖かくなりましょう?私紅茶飲むけど、朔夜くんや廉さん…夢叶くんは何を飲む?」
軽快な足取りで中を潜り、靴を脱ぐとささっと台所へ向かおうとする静香を、廉は抱きしめて頬へと唇を押し付けた。同じように頬へ返して夢叶ともすると奥へと入っていった。
「驚いた?」
「……別に、家庭なんて―――色々だろ?」
そっぽを向いて呟いた朔夜は、そのまま室内へ軽すぎる荷物を抱えて入っていくのを夢叶が見送った。
「今日から一緒に暮らす朔夜(さくや)くんですよー」
雪が静かにちらついていた最中、ゆっくりと開かれた扉の向こうで、冷たい横顔が雪に掻き消えてしまいそうに見えた。
きつく据えられた瞳と、笑みを形取ることもなく引き結ばれた唇。印象という強い残像を残し、彼は―――八代朔夜は家族の一員となった。
「お帰り、お母さん………。俺が夢叶(ゆうと)。夢が叶うと書いて夢叶というんだ」
手を差し出したのは、この一条家の嫡子である夢叶という細く白い肌をした二人の出会いの瞬間だった。
白い雪が舞い散り
花弁のように
降りしきる中で
雪の淡さで笑顔を寄せる
白い綺麗な花を見つけた
「玄関は寒いですよ…入りなさい」
「父さん…」
夢叶の後ろに立ち止まったのは、黒ぶちの眼鏡の奥まで温和な光を称えた笑みを見せる一条廉。穏やかで市立の高校で歴史の教師だ。
家族として加わる朔夜は、深く頭を下げた。
「今日からお世話になります…八代朔夜といいます」
淡々とした口調と、静か過ぎる空気がひんやりと流れた瞬間(とき)。廉の妻であり、夢叶の母親は朔夜の背中を強く押した。
「寒いから早く中で暖かくなりましょう?私紅茶飲むけど、朔夜くんや廉さん…夢叶くんは何を飲む?」
軽快な足取りで中を潜り、靴を脱ぐとささっと台所へ向かおうとする静香を、廉は抱きしめて頬へと唇を押し付けた。同じように頬へ返して夢叶ともすると奥へと入っていった。
「驚いた?」
「……別に、家庭なんて―――色々だろ?」
そっぽを向いて呟いた朔夜は、そのまま室内へ軽すぎる荷物を抱えて入っていくのを夢叶が見送った。