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G線上のアリア

第1章 雪の日

「………仲良くできるか、不安になってきた…」
「大丈夫だよ…」
小さく笑って廉が夢叶の頭を撫でた。見上げた夢叶はこくりと浅くではあるが頷く。


家族が増えたことを単純に喜ぶ夢叶を、朔夜は遠くを見やる瞳で見つめていた。






朔夜は孤独を抱えていた。


家族の誰の瞳から見ても、はっきりと分かるほどの孤独を―――。朔夜が初めて訪れた日から、彼の気持ちが解けるまでに二週間という日が流れることとなる。…
意外な形でその孤独に触れたのは………。
その日に限って夢叶は眠れず、飲み物を求めて扉を開けた。
カタン…。小さな音だったが、確かに耳に入った夢叶が小首を傾げてみた。
「…朔夜、起きているの?」
もし寝ていては駄目だからと、夢叶は出来る限り小さなノックをした。―――返事はない。
《気のせいかな?…》
止まった足を進めようと踵を返した時、何の前触れもなく扉は開いた。
「…あ、起きていた?僕、今から何か飲もうと思うんだけど朔夜も飲………」
言いかけた夢叶を、強引に引きずり室内へと朔夜が運んだ。腕の強さに一瞬とは言え、驚いた夢叶が何か言おうとしたが、自分を抱きしめる朔夜の腕が震えているのを見て、言葉は自然と喉の奥へと流れ落ちる。
「…朔夜……?」
「ごめん…………」
小さな呟きが耳元で聞こえ、さっきよりも強く引き寄せられた夢叶は、必死にしがみついてくる朔夜の腕に手を添えた。
「此処にいるよ。…怖くないから………」
色々と親戚を盥回しにされていた朔夜を、静香が探し出して引きとった。ずっと探していたと手を差し出された朔夜は、複雑な表情しかできなかった。
女に触れられる―――それだけの行為に、朔夜は身を強張らせ叫び、吐いていたのに。

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