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G線上のアリア

第4章 夢は…

「朔夜君もテレビは後でも見れるわよー?」
「俺は宿題は昼休みに済ましたー」
「要領いいのね~」
ちらっと見てくる静香に、夢叶は心で呟く。
《かあさんの弁当が凄くて無理です~~~っ》
「静香さん!手伝うよ」
「あらあらまあまあ…ありがとう!じゃ、食器運んでちょうだいね」
嬉しそうに台所へ戻る静香についていく朔夜に、夢叶は無言で片手をあげた。小さく頷くことで返した朔夜を残してそのままダイニングで宿題を広げる。
ややあって、取り組んでいる最中に廉が学校から帰ってきたのか、駆け出して行った静香。―――お帰りなさいとキスを繰り返してるのだろう両親を、ちょっとだけ照れてしまう思春期の少年が二人居た。
しばらくすると廉が入ってきて、静香の腕には廉の上着があり、それをハンガーへ掛けた静香が二人を呼んだ。
「ご飯よー、宿題はいつだって出来るからこっちにいらっしゃーい」
一条家において家族での食事というのは、大きい重点をもっており。たとえ宿題をしてようが、遊んでいようが一家で食べるのだ。


結局ご飯を食べた後も、しばらくはそのままティーブレイクへ続いてしまう一条家であった。

翌日は約束したノートを二冊青葉に前に出した。
「はい、…一応簡単に出そうな部分を纏めたから回すならこっちは回していいから…」
毎日の復習代わりに使っている三学期分を纏めていたノートを差し出す。一瞬、青葉は言われている意味が分からなくて―――思わず、夢叶をまじまじと見た。
「?もういらなくなった?」
小首を傾げて聞く夢叶に、青葉は瞬きを繰り返していた目を向け、それからおもむろに懐くように抱きつく。
「ありがとー!!委員長っ!!」
ハグは家族で慣れていた分、思わず背中を撫でると青葉は夢叶を抱きしめたまま、幾度かその細い背を叩く。

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