G線上のアリア
第6章 本当に怖いこと
「ずっと引っかかっていたんだ…」
そう、彼を初めて見つけたのは桜が咲く四月だった。
クラス表を高鳴る気持ちを堪えながら覗き込んだ隣に、彼は頭を掻きながらリラックスして見える仕草で表を確認していく姿を見て。―――誰かに似ていると思ったんだ。
今日彼が言った一言を夢叶は崩れかけていたパズルのピースを求めて家路を急いだのだと朔夜に言った。
「その答えが此処にあるってこと?」
そう言うと夢叶は本当に嬉しそうに、そして大切そうにアルバムを抱えたまま。小さくコクリと縦に頭を振ってアルバムを開いた。
それは幼稚園の頃のアルバムで、卒園時配られる一冊の記録書だった。
「………で?」
正直言うなら今先ほど二人は想いを告げあった。
恋人という形にたった今なったばかりであるのに、夢叶は既に違うことをしている。朔夜はそんな一つのことに意識をとことん集中してしまえる夢叶に、淡い痛みと刹那さとらしさに苦笑を口元に浮かべて微笑した。
「ほら…これが僕だよ」
指差したのは一生懸命芋ほりをしている夢叶だった。
隣には夢叶が向ける笑顔に同じ笑顔で返している幼児の姿がある。懐かしそうにアルバムに映る彼を撫でて夢叶は笑みを広げるばかりだ。意味が全くもって分からない朔夜は、それでも夢叶の言葉を待つ。
「これが彼、出水青葉くん。僕のことを『ゆうちゃん』って呼んでて、僕は彼のことを『あーちゃん』って呼んで居たんだ。三年間同じ幼稚園で同じクラスで過ごした………一番の友達だったんだ」
そう語る瞳は懐かしい以上の感情を見せ、朔夜は膝の上に置いていた拳を握る。先ほど交し合った言葉は偽りではないかと思うほど、その瞳は嬉しそうに輝いていた。
「好き、だったんだろう?」
言葉が自然とキツクなる。抑えようと思うのに、心がままならずに吐き出す言葉。駄目だと思うほど心は痛みで麻痺していく感じがあった。
そう、彼を初めて見つけたのは桜が咲く四月だった。
クラス表を高鳴る気持ちを堪えながら覗き込んだ隣に、彼は頭を掻きながらリラックスして見える仕草で表を確認していく姿を見て。―――誰かに似ていると思ったんだ。
今日彼が言った一言を夢叶は崩れかけていたパズルのピースを求めて家路を急いだのだと朔夜に言った。
「その答えが此処にあるってこと?」
そう言うと夢叶は本当に嬉しそうに、そして大切そうにアルバムを抱えたまま。小さくコクリと縦に頭を振ってアルバムを開いた。
それは幼稚園の頃のアルバムで、卒園時配られる一冊の記録書だった。
「………で?」
正直言うなら今先ほど二人は想いを告げあった。
恋人という形にたった今なったばかりであるのに、夢叶は既に違うことをしている。朔夜はそんな一つのことに意識をとことん集中してしまえる夢叶に、淡い痛みと刹那さとらしさに苦笑を口元に浮かべて微笑した。
「ほら…これが僕だよ」
指差したのは一生懸命芋ほりをしている夢叶だった。
隣には夢叶が向ける笑顔に同じ笑顔で返している幼児の姿がある。懐かしそうにアルバムに映る彼を撫でて夢叶は笑みを広げるばかりだ。意味が全くもって分からない朔夜は、それでも夢叶の言葉を待つ。
「これが彼、出水青葉くん。僕のことを『ゆうちゃん』って呼んでて、僕は彼のことを『あーちゃん』って呼んで居たんだ。三年間同じ幼稚園で同じクラスで過ごした………一番の友達だったんだ」
そう語る瞳は懐かしい以上の感情を見せ、朔夜は膝の上に置いていた拳を握る。先ほど交し合った言葉は偽りではないかと思うほど、その瞳は嬉しそうに輝いていた。
「好き、だったんだろう?」
言葉が自然とキツクなる。抑えようと思うのに、心がままならずに吐き出す言葉。駄目だと思うほど心は痛みで麻痺していく感じがあった。