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G線上のアリア

第7章 信じてほしい

彼が本当に男性にしか興味がないなら、きっとこの気持ちはいつか萎えるだろう。どこをどうやっても男として言えるのは身体でしかないからだ。貧弱で筋肉の欠片もないこの身体を鏡に映すことも好まない。公衆の面前で調べる身体検査ですら嫌悪してしまう夢叶だ。今、叶っているこの瞬間を胸に残せば、きっと救われる。
《僕はずっと忘れない…》
心で呟いて朔夜の口付けを受け入れた。








「夢叶君、朔夜君…入っていい?」
ノックの先で声がして、二人は慌てて身体を離す。離れる瞬間に感じた痛みは、甘く―――切ない香りをもっていた。
「いいよ…」
「開けますよ~」
小さな声で断りを入れた静香が、部屋に入ってくる。まだ散らばったアルバムが幾つかあり、静香は小さく安堵するように笑った。
「あらあら…懐かしいわねぇ…」
そう言って拾ったのは、問題だった幼稚園の頃のアルバム。静香は中腰に座り、一枚一枚を開けだした。
「お母さん、なおせないよ」
「あら、お母さんだって見てもいいと思うわ!ね?朔夜君♪」
そう聞かれて朔夜が断れないのを、静香は知っているようで三人で仲良く、一枚一枚にある夢叶の説明やら何やらを語りだした。

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