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G線上のアリア

第7章 信じてほしい

「これはねぇ…夏休みのプールへ行ったときでねぇ…」
本当に楽しそうに話し出す静香は、夕飯つくりを思い出すまで楽しそうに話し。朔夜は知らない夢叶を語ってくれる静香に耳を傾け、一人恥ずかしくて仕方がない夢叶が横からアルバムを取り上げたりしながら盛り上がった。
その日二人は宿題を、結局夜の寝る前にせざる終えなくなってしまった。

「………」
リビングで向かい合う二人の他に人の姿はない。廉は二階の書斎で残してきた仕事をしているし、静香は近所の集会に出かけてしまった。
二人きりになると、どうしても思い出してしまい手が止まりがちである朔夜に反して、夢叶の手は一度も止まることがなく、綺麗な字で文字を綴っていった。

「夢叶…」
「ん?」

手を止めて見ていた朔夜に気がつき、夢叶も同じように顔を上げた。
「二人の時は恋人でいいんだな?」
「……面倒くさい?」
朔夜にとって他人とはどうでもいいと言い切ってしまえるが、夢叶にとってはそうじゃない。その壁を前に苦笑してしまう。諦めてしまうには夢叶が欲しいと思ってしまうのを朔夜は思い呟いた。
「面倒でもなんでも夢叶の心が手に入るならいい…人前では従兄弟という仮面を被る」
確かに先ほど静香が入った瞬間から朔夜は、夢叶にとって従兄弟以外の何者でもなくなっていた。

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