
G線上のアリア
第7章 信じてほしい
「演技は得意なんだ…」
一抹にあった不安を綺麗に薙ぎ払った朔夜の演技力は、そうやって周囲を自分を守ってきたのだろうというのが分かり、夢叶は俯いて「ごめん」と呟いた。
「謝るなよ…。俺だってわざわざ後ろ指を指されたい訳じゃないし、好奇心に晒されるなんてごめんだから『当たり前』のことだと思っている」
行く前に静香が炒れてくれたホットココアを手に取り、一口飲み込んで言葉を続けた。
「本当なら夢叶に俺以外の親しい男を作って欲しくないけど、それは我侭だから控える―――けど、俺以外に興味がいくことは許さないからな」
真正面から睨み据える瞳に、夢叶は物怖じすることなく笑みを浮かべた。
「それは大丈夫…僕は朔夜が此処に来た夜よりも前に君が好きになっていたから」
はっきりと言葉にした夢叶に、朔夜はきょとんとした瞳に変わる。意味が分からなくて当然だと、夢叶も同じようにホットココアを手にして言った。
「君と会うのは三度目だったんだ」
「え?」
自分の記憶を探ろうとする朔夜に、夢叶は柔らかい笑みで苦笑を消した。
「君が赤ちゃんの頃に会ったのが一回。二回目は小学校の低学年の頃におじい様の茶会で逢っているんだ…」
「はぁ?赤ちゃん??茶会??」
「流石に赤ちゃんの頃の記憶はないよ。それはお母さんに聞いたんだよ。…茶会の時は覚えてなくて当然だと思うし」
くすくすと思い出し笑いをしながら言う夢叶に、朔夜の頭の中がこんがらがってくる。必死に記憶を辿ろうとする朔夜に笑みを刷いたまま言った。
朔夜は自分に残る記憶を漁ってみるが、その当時はそんなことに楽しみを見出せることはなかった。
忘れたい、消したい記憶が心の芯からはみ出さないように耐えて暮らしてきた。
祖父は茶会という名目で、自分の利権を広げることに楽しみを見出していたタイプであったし、子供が紛れてもそれほど楽しい場所ではなかった。
一抹にあった不安を綺麗に薙ぎ払った朔夜の演技力は、そうやって周囲を自分を守ってきたのだろうというのが分かり、夢叶は俯いて「ごめん」と呟いた。
「謝るなよ…。俺だってわざわざ後ろ指を指されたい訳じゃないし、好奇心に晒されるなんてごめんだから『当たり前』のことだと思っている」
行く前に静香が炒れてくれたホットココアを手に取り、一口飲み込んで言葉を続けた。
「本当なら夢叶に俺以外の親しい男を作って欲しくないけど、それは我侭だから控える―――けど、俺以外に興味がいくことは許さないからな」
真正面から睨み据える瞳に、夢叶は物怖じすることなく笑みを浮かべた。
「それは大丈夫…僕は朔夜が此処に来た夜よりも前に君が好きになっていたから」
はっきりと言葉にした夢叶に、朔夜はきょとんとした瞳に変わる。意味が分からなくて当然だと、夢叶も同じようにホットココアを手にして言った。
「君と会うのは三度目だったんだ」
「え?」
自分の記憶を探ろうとする朔夜に、夢叶は柔らかい笑みで苦笑を消した。
「君が赤ちゃんの頃に会ったのが一回。二回目は小学校の低学年の頃におじい様の茶会で逢っているんだ…」
「はぁ?赤ちゃん??茶会??」
「流石に赤ちゃんの頃の記憶はないよ。それはお母さんに聞いたんだよ。…茶会の時は覚えてなくて当然だと思うし」
くすくすと思い出し笑いをしながら言う夢叶に、朔夜の頭の中がこんがらがってくる。必死に記憶を辿ろうとする朔夜に笑みを刷いたまま言った。
朔夜は自分に残る記憶を漁ってみるが、その当時はそんなことに楽しみを見出せることはなかった。
忘れたい、消したい記憶が心の芯からはみ出さないように耐えて暮らしてきた。
祖父は茶会という名目で、自分の利権を広げることに楽しみを見出していたタイプであったし、子供が紛れてもそれほど楽しい場所ではなかった。
