優しいキスをして
第1章 出来心
「あれ?珍しく練習?」
この声は……
あたしは反射的に振り向く。
「っ、びっくりしたぁ。北澤さんじゃん」
「なに?カットの練習?」
そう言いながら、近づいてきた。
「そう」
北澤さんはあたしのウイッグを見ながら傍らの椅子に座った。
「えらいじゃん。これ、……前下がり?」
「うん、苦手なんだよね……北澤さんこそ本店来るなんて、なんか用事?」
「在庫取りに来ただけ。市村さんがうるさいから」
「ああ、なるほど。わざわざえらいじゃん」
「自分の方が早く上がって暇なんだから取り行けっつーの」
また昼間に色々と文句言われたのかな。
北澤さんは本当に嫌そうな顔をした。
市村さん……そう言えばなんか言うことあったような……。
「あ!この間うちの店が貸したストパーの薬、入ってたでしょ?」
「え、まだ籠見てないからわかんないけど、じゃあ今日返すよ」
あたしが在庫置き場に小走りで向かうと、北澤さんもすぐ後ろからついてきた。
「そうそう、昨日ちょっと籠覗かせてもらったら入ってたから。昼間電話するの忘れてた」
あたしは8番店の在庫の籠からストパーの薬剤を2本取り出した。
「じゃあ、2つもらうからね?」
「昨日見たの?だって昨日は刺青くんと……」
あ、やばっ。口がすべった……。
「あー……昨日会わなかったの」
北澤さんは少し驚きつつ、興味ありげに言った。
「どうしたの?浮気でもされてたとか?」
あたしは適当なことを言うのもめんどくさくて、正直に話した。
「んー、逆かな。浮気相手なのはあたしだし、奥さんにバレそうだから今日はやめとこうって連絡あってさー」
北澤さんはなんとなくニヤニヤしてる。
「泥沼って感じだねぇ。バレそうって、バレたらヤバイんじゃない?」
「ヤバイだろうねぇ。まあ、上手くやってくれるでしょ」
あたしは逆に爽やかに笑ってやった。
ノブくんは口が上手い。きっと奥さんが怪しんでも上手く立ち回って誤魔化すだろうな。
まあ、もしバレたってあたしはシラを切るつもりだけど。
この声は……
あたしは反射的に振り向く。
「っ、びっくりしたぁ。北澤さんじゃん」
「なに?カットの練習?」
そう言いながら、近づいてきた。
「そう」
北澤さんはあたしのウイッグを見ながら傍らの椅子に座った。
「えらいじゃん。これ、……前下がり?」
「うん、苦手なんだよね……北澤さんこそ本店来るなんて、なんか用事?」
「在庫取りに来ただけ。市村さんがうるさいから」
「ああ、なるほど。わざわざえらいじゃん」
「自分の方が早く上がって暇なんだから取り行けっつーの」
また昼間に色々と文句言われたのかな。
北澤さんは本当に嫌そうな顔をした。
市村さん……そう言えばなんか言うことあったような……。
「あ!この間うちの店が貸したストパーの薬、入ってたでしょ?」
「え、まだ籠見てないからわかんないけど、じゃあ今日返すよ」
あたしが在庫置き場に小走りで向かうと、北澤さんもすぐ後ろからついてきた。
「そうそう、昨日ちょっと籠覗かせてもらったら入ってたから。昼間電話するの忘れてた」
あたしは8番店の在庫の籠からストパーの薬剤を2本取り出した。
「じゃあ、2つもらうからね?」
「昨日見たの?だって昨日は刺青くんと……」
あ、やばっ。口がすべった……。
「あー……昨日会わなかったの」
北澤さんは少し驚きつつ、興味ありげに言った。
「どうしたの?浮気でもされてたとか?」
あたしは適当なことを言うのもめんどくさくて、正直に話した。
「んー、逆かな。浮気相手なのはあたしだし、奥さんにバレそうだから今日はやめとこうって連絡あってさー」
北澤さんはなんとなくニヤニヤしてる。
「泥沼って感じだねぇ。バレそうって、バレたらヤバイんじゃない?」
「ヤバイだろうねぇ。まあ、上手くやってくれるでしょ」
あたしは逆に爽やかに笑ってやった。
ノブくんは口が上手い。きっと奥さんが怪しんでも上手く立ち回って誤魔化すだろうな。
まあ、もしバレたってあたしはシラを切るつもりだけど。