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優しいキスをして

第1章 出来心

ノブくんとの割りきった関係の方が都合がよかった。
どこの誰とあたしがヤっててもノブくんは束縛はしない。やきもちは多少あるみたいだけれど。それもフリをしているだけかもしれないし。どうせあっちも奥さんとしてるだろうし。お互いに文句は言えないのだ。
ノブくんは彼氏を作ってもいいと言ってくれる。彼氏ができても関係はできれば継続してほしいのだとも言った。
でも結局、縛りはない。今はそれがちょうどいい。
だって特定の人を作るとその人としかヤれない。淋しいときにヤれないじゃんか。
それは耐えられない。淋しさを埋めたいときに特定の人としかできないなんて不便じゃないか。
あたしもいつか、またひとりの人を好きになれるときが来るのだろうか。
ふと、北澤さんが頭に浮かんだ。
そりゃ、前は好きだった。あの人に出会うまでは。
でも、今は……よくわかんないな。
昔程あたしの脳内を占領してはない。
例え昔好きだったとはいえ、付き合ってもあたしはきっと浮気してしまうだろう。
まだまだあたしには時間が必要みたいだ。
「さて、たまには早く帰るかな」
あたしは携帯で時間を確認した。
今日は4日。あたしが元カレにフラれたのは5日。あたしは毎月その日の前後に、未練がましくもたまに元カレにメールを送ってしまうのだ。
ホントに自分でも嫌になるほど未練たらたらで、情けなくなる。
内容は、別れた理由を教えてほしいということ。戻りたくないと言えば嘘になる。
でも、別れたい理由を最後まで教えてもらえなかったことが一番辛かった。
理由をちゃんと言ってくれればまだ納得も、あきらめることもできたかもしれないのに。こんなにも忘れられず、苦しむことはなかったかもしれないのに。
今日も久しぶりにメールしてみようかな。
どうせ返ってこないと思うけど。
あたしは車に乗り、エンジンをかけ自宅へと向かった。

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