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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

次の日の夜、店長会議に出席した。
店長会議は社長を始め各店の店長、副店長、チーフ以上の役職者が出席する会議で、数ヵ月前からあたしも勉強で出席することを義務づけられている。
今日は会議でなぜかあたしだけ先生(うちの会社では社長のこと)のターゲットにされ、理不尽なことを言われて会議か終わった。内心イライラしながら裏口から出ると、時間を確認するため携帯を開いた。
するとメール受信が3件あった。
どうせまた暇なセフレの誰かだろう……と思いつつ、メールボックスを開いた。
ひとつのアドレスを見て、あたしは一瞬息が止まった。
「……っ!……う……そっ」
涙が一気に溢れ出した。
登録を削除しても、アドレスをみればすぐわかる。あたしは手のひらで口を押さえた。
「そんなとこ突っ立ってどうしたの?」
後ろから来た人に、声をかけられた。
この声は、北澤さん…………?
なんでこんなときに限って……っ。
あたしは涙が止まらなくて、振り向けない。こんな顔、誰にも見せられない。
「なんでもないです。お疲れさま、でっ、……す」
あたしは横に顔を背けながら言い、歩き出した。
「どうした?大丈夫?」
北澤さんに横に並ばれ、問われる。
「……なんでもないったらっ」
あたしは横を向いたまま俯いたが、語尾が
少し涙声になってしまった。
「……っ。もしかして、泣いてるの?」
「ちがうから、気に、しないで……」
「そう……お疲れさま」
「じゃあ…………っ」
そう言うのが精一杯で、あたしは顔を見られたくなくて小走りで車まで走った。
あたしはすぐに車に乗り、その場を離れた。




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