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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

あたしは車から降りてボンネットの前でうずくまっていた。
そこへ、ライトの光と共に一台、車が駐車場に入ってきた。車は空いているスペースに止めたみたいだった。
人の気配がした。走って近づいてくる。
「美優!」
あたしは呼ばれて、顔を少しずつ上げた。
ジーンズに、ジャケット。シャツを、中に着ていた。
駐車場の照明で顔がはっきり見えた。
「……えい、た」
「……大丈夫か!?尋常じゃなかったからなに…………」
あたしは気づけば栄太に抱きついていた。
「美優…………」
あたしは栄太の顔を見ると一度は止まった涙がまた溢れてきて、栄太のジャケットを濡らしてしまった。
泣いているあたしを、栄太は何も言わず優しく抱き締めてくれた。
しばらくすると、栄太に宥められ、栄太の車に乗った。栄太はあたしのシートベルトを確かめると車を運転し始めた。
あたしは何も言わず、深夜の真っ暗な景色を眺めていた。
しばらくすると、車は停まった。
目的地に着いたようだ。
「美優、降りるぞ?」
「うん……」
栄太はあたしの手を乱暴に掴むと黙って歩いて、ドアを開けた。部屋に入るなり、栄太は抱き締めてくれた。強く、でも労りを感じる腕で。
「美優……なにがあった?」
「栄太っ、……あたし辛い。あたしっ、……もう、……っもう、どうにかなっちゃいそうっ……」
「可哀想にな。今日は俺に全部任せな?」
「うんっ、栄太に、全部あげる…………っ」


……………………。


栄太に何度も、何度も抱かれて、あたしの心はどうにかバラバラにならないで済んだ。
裸のままで二人でうつ伏せになって横になっていた。
「今日ね、元カレからメールが来たの……」
「そうなの?」
「前の日に、ありのままの今のあたしのことをメールに書いた。もう処女じゃないし、簡単に傷つかないからって含みも込めて。でも、返ってきたメールは、今のあたしを軽蔑するばっかりで、あたしの聞いたことなんて全く教えてくれなかった…………。何回か今回はメールのやり取りはあったけど、結局言ってくれなかった……」
「………………」
「あたしは、理由を言ってほしかっただけなの……。はっきり言ってほしかったのっ…………!」

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