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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

栄太とは、そんなとき知り合った。
泣きっ面で夜の本屋の自販機の側にしゃがみこんで煙草を吸っていた。
「ねえ、一人?こんなとこで何してるの?」
顔を覗き込まれた。あたしは目だけを目の前の男に向けた。
「誰よあんた。ほっといてよ」
「目ぇそんなに泣き腫らしてどうしたの?」
「関係ないでしょ」
あーやだやだ。ナンパかよ。
あたしは立ち上がってそっぽを向いた。
「彼氏と喧嘩でもした?浮気でもされたの?」
「…………」
あたしはだんだん悲しくなって、涙のスイッチが入ってしまった。
「当たり?そんなヤツこっちからフっちまえよ。また新しい彼氏作ればい…………っ」
男があたしの前に回り込んだときには、あたしの目からは涙が零れ落ちていた。
「……っ、……ひっく、……」
目の前の男はすごい慌ててた。
「ご、ごめんね!?俺そんなつもりじゃ………」
「もう、……ほっといてよ」
あたしは男から逃れるようにフラフラ歩き出した。
「ねえ、俺でよかったら話し聞くよ!」
男が背中越しに言った。
「別にいい……」
「知らないヤツの方が話しやすいこともあるよ!」
あたしは後ろを振り向いた。
「ね?」
あたしは、なぜかあったばかりの栄太に百夜とのことを話してしまった。ヘラヘラしてるけど、栄太には不思議なにおいを感じた。


「そっかぁ……。ズルいヤツだね、その彼氏。美優ちゃんが不憫だよ。自分は悪者になりたくなかったんだね…………」
「何も知らないくせに、百夜のこと悪く言わないでよ!」
あたしは百夜を悪く言われたことに我慢できなくて噛みついてしまった。
「彼氏、百夜ってんだ?こんなに苦しんでるのに、まだ彼氏のこと庇うの?」

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