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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

「美優、この間はごめんな。嫁さんがなんか勘繰るからさぁ。でも、もう大丈夫だから」
今日は久しぶりにノブくんに会っていた。
どうやら奥さんの疑いが晴れたようで、珍しくノブくんの方から連絡があった。
「てゆーか、ノブくんどうしたの?すっごい痩せたよね?」
さっきから気になってたが夜の暗がりでもはっきりわかるほど全体的にノブくんは体が小さくなっていた。
「あーここんとこ仕事忙しくてさ。飯食べてる時間なかったから。1週間昼飯抜いたら5キロ落ちちゃった」
「ホントに5キロ?もっと減ったんじゃない?」
あたしはまじまじとノブくんの体を見る。体もそうだがもともとどちらかとゆーと面長な
顔も頬が削れて頬骨がくっきりしている。
「俺の場合筋肉量が多いから筋肉が削ぎ落ちちゃうんだよ。脂肪が少ないからごっそり無くなったように見えるだけ」
「そうゆーもんなんだー。絵もなんか縮んじゃってる」
ノブくんの筋肉の張りがなくなった両二の腕の刺青も一回り縮み、絵が滲んでいた。
「そうなんだよ……。超ショックでさぁ……。明日からまた山盛り飯食わなきゃ」
ノブくんは太れない体質で自称脂肪率が8%しかないらしく、確かに細くて筋肉質だ。おまけに普通の人の3倍は食事を取らないとすぐに痩せてしまう。
「ねぇ、今日はやめとこうよ。ゆっくり休んだ方がいいって」
あたしはノブくんの痩せた様を見て、今日は帰ろうと促した。
「なぁに?それって俺のこと心配してくれてるの?」
ノブくんのメガネの奥の鋭い目が、妖しさを含んだ。助手席のあたしにジリジリ近づいてきた。
あたしはなおも体のことを思って説得を試みる。
「当たり前じゃん。だってこんな……」
それはノブくんのキスで失敗に終わった。奪うようなキスであたしを翻弄すると、肩を強く抱き、キスをしながら空いた方の手で胸をまさぐってくる。あたしの唇をこじ開けて舌を絡め取ると口内を侵し、あたしの口の端からは混じりあった唾液が一滴零れた。

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