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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

ああ、明るい。

ここはどこだろう。

誰かいる。……だれ?

あたし、そっちに行きたいのに、体が重くて動かないの。

ねえ、だれなの?
真っ白で、光が眩しいな……。

ちゅん、……ちゅんちゅん……。小鳥の声?
すずめ?ん?…………すずめ?

あたしは目を開けた。
夢だったのか…………。
……もう朝だ。どうも寒いと思ったら裸じゃん。裸?
はっとしてすぐ横を見ると裸のノブくんが寝ていた。慌ててケータイで時間を確認する。
「6時……!?」
慌ててノブくんを揺り起こす。
「ノブくん大変!あたしら寝ちゃって朝になっちゃったよっ!ねえっ、ノブくんたらっ」
「……ん?……んー。6時?」
「ノブくんも今日仕事でしょ?早く着替えて帰らないと!」
「やべっ。早く仕度するぞっ」
そのあとは二人して慌てて着替えて別れると、あたしも自分の車に飛び乗り、自宅に猛スピードで帰った。
家に帰ってとりあえずシャワーを浴びて服を着替える。化粧を手早くしながらお母さんと久し振りに話した。
「美優、最近帰り遅かったり朝帰ってきたり多いけど、何してるの?」
鏡越しにお母さんがあたしを見る。
「えー?夜疲れて眠かったら無理しないでどこかに止まって寝ろって言ってたじゃん?今日はコンビニで寝てた」
「お父さんがさー、変な友達と付き合ってんじゃないかってうるさいのよ。友達の家泊まったりしてるから」
あの人は何かにつけて文句言いたいだけでしょ?
「そうなんだー。帰りが遅いのは彼氏と会ってるからだよ」
嘘ではない。
「また違う彼氏できたの?」
「んー。……妻子持ちのね」
「えぇ!!なによそれ!?」
やっぱり驚くか……。娘が浮気相手じゃ当然か……。
「別に割り切ってんだからいいじゃん。ずっと付き合うわけじゃないしー」
「そんなこと言って!早々と見切りつけなさいよ?」
「はいはい。わかりましたっと。じゃあ行ってきまーす」
洗面所を1回出たが、思い出して戻った。
「お母さん、今日友達の家泊まるからねー」
「ちょっとは回数減らしなさいよー」
「わかってるってー」
お母さんごめんね。あたしホントはそれだけじゃないんだ。口が裂けても言えないけど。
あたしはバックを持つとすぐに家を出て車に乗る。車の充電器に携帯を差し、エンジンをかける。
えっと、今日は2番店に出勤だな。
あたしは車を走らせ、店に向かった。

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