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優しいキスをして

第2章 深まる傷。そして暴走

「あとさ、あの人も」
「あの人ってー?」
剣城さんかな?あの人もそうゆーの気にしそうだもんなー。
「北澤さんだよ」
えっ?北澤さん?
「はあ?北澤さんが?なんで?」
「知らねえよ!おめぇこの間の店長会議、具合悪いとかで来なかったろ?あんときにな!なんでもオレに聞くな!」
出た。ライの短気。だから奥さんと続かないんだよ。
「はい!練習終わりにしてー!片づけてー!」
よしみさんの号令と共にみんな一斉に片づけ始め、終わった人から朝の掃除を始める。終わると朝礼をするのだが、そこで店の電話がなった。
店長のよしみさんが出る。よしみさんの受け答えでなんとなく電話の雰囲気を察し、あたしは出かける支度を始める。よしみさんが戻ってくると、
「須藤!本店行って!」
「はいはい。もう準備万端ですよ」
あたしは朝持ってきたもの全部をまた持っていた。
「よろしくね」
「ういーす」
今日も転勤族の始まりだ。


「お疲れさまでーす」
あたしは階段を登りきり、竹井さんに声をかけた。
「おー須藤お疲れ」
竹井さんはカット中だった。
あたしは辺りを見回したが田橋さんはいないようだ。
「誰もいないんですね?」
「そうなの。次の人ご案内して、その次の人はストパーだからよろしくね?」
「了解です」
あたしはまず一人をご案内し、シャンプーをすると席へまたご案内しカットクロスをつける。
もう一人をご案内し、パーマクロスをつけると、すぐにストパーの薬を塗布し始める。
終わったくらいに竹井さんがポイントパーマを巻き終わり、あたしはバトンタッチして薬液をつけていく。竹井さんはお待たせしていたカットのお客さまにとりかかった。
あたしは次々ご案内しつつ、店を回した。とりあえずお昼過ぎにいったん落ち着き、フロアに残り一人となったお客さまはカットが終わり、カラーだったのであたしがカラーに入り、竹井さんに先にお昼に入ってもらった。
シャンプーし、マッサージが終わった頃に竹井さんが戻ってきた。
あたしもお昼に入り、一息ついた。
あたしはカップスープをすすりながら煙草を吸っていた。

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