優しいキスをして
第2章 深まる傷。そして暴走
やっとお客が全員帰ったのは7時だった。
「はあぁ、お疲れさんですー」
あたしはお客がいなくなるとどっと疲れが出た。受付の後で座りこんでしまった。
「お疲れ」
北澤さんは疲れてないのだろうか。割りと涼しげな顔をしてる。
はあ……。ちょっと休みたい……。でもゆっくりしてると約束の時間に遅れちゃうしなぁ。
「あたし、とりあえずタオル回してくるー……」
あたしは重い体を引きずるようにして動いた。
「俺はフロア片づけるわ」
片づけは山のように待っていた。
置きっぱなしのカラー用のカップを洗っていると北澤さんが出しっぱなしのお茶も持ってきた。
「随分お疲れみたいだね」
「今日は2番店に出勤したらすぐに本店に呼ばれて、お昼食べたらすぐにここだもん。疲れたよ」
あー、腕も限界だぁ……。
「転勤族は損だよな。いつも忙しいとこ行かされるんだから」
「うん……。使いっぱしりもいいとこ」
あー、あたしもう笑う余裕もないなぁ……。
たぶん超真顔だ。
洗濯機が終わった音がした。
あたしはちょうど洗い物が終わり、手を拭いた。
「タオルもう一回回してくる」
「うん……」
あたしが洗濯が終わったタオルを抱えて戻ってくると、北澤さんはレジ締めに入ったようだ。
あたしは疲れもあって無言でタオルを伸ばし始めた。その間も何回かめまいや立ちくらみを感じながらも、終わると自分の売り上げ表とカルテを書くため受け付けに行った。
カルテを選んで書き始める。
もう、しゃべる余裕もない。無言で書き続けた。
「ねえ……、最近どうなの?」
北澤さんは自分のカルテに目線を向けたまま言った。
「どうって?」
あたしは今日担当した人の顔を思い浮かべ、必死に思い出してはカットの項目を埋める。
「夜かなり遊んでるって聞いたけど」
あたしもカルテから目を離さずに答えた。
「あー噂になってるらしいね」
「そんなに男とっかえひっかえしてるの?」
…………。
「とっかえひっかえねえ。喰い逃げはとりあえずしてないけど」
「楽しい?」
あたしはふと、北澤さんの方を見た。
北澤さんもカルテから目は離してないけど、なんだか悲しそうな顔をしていた。
あたしの目線を感じたのか、頭が動いて北澤さんがあたしの方を見る気がして、あたしは思わず知らぬふりをした。
「はあぁ、お疲れさんですー」
あたしはお客がいなくなるとどっと疲れが出た。受付の後で座りこんでしまった。
「お疲れ」
北澤さんは疲れてないのだろうか。割りと涼しげな顔をしてる。
はあ……。ちょっと休みたい……。でもゆっくりしてると約束の時間に遅れちゃうしなぁ。
「あたし、とりあえずタオル回してくるー……」
あたしは重い体を引きずるようにして動いた。
「俺はフロア片づけるわ」
片づけは山のように待っていた。
置きっぱなしのカラー用のカップを洗っていると北澤さんが出しっぱなしのお茶も持ってきた。
「随分お疲れみたいだね」
「今日は2番店に出勤したらすぐに本店に呼ばれて、お昼食べたらすぐにここだもん。疲れたよ」
あー、腕も限界だぁ……。
「転勤族は損だよな。いつも忙しいとこ行かされるんだから」
「うん……。使いっぱしりもいいとこ」
あー、あたしもう笑う余裕もないなぁ……。
たぶん超真顔だ。
洗濯機が終わった音がした。
あたしはちょうど洗い物が終わり、手を拭いた。
「タオルもう一回回してくる」
「うん……」
あたしが洗濯が終わったタオルを抱えて戻ってくると、北澤さんはレジ締めに入ったようだ。
あたしは疲れもあって無言でタオルを伸ばし始めた。その間も何回かめまいや立ちくらみを感じながらも、終わると自分の売り上げ表とカルテを書くため受け付けに行った。
カルテを選んで書き始める。
もう、しゃべる余裕もない。無言で書き続けた。
「ねえ……、最近どうなの?」
北澤さんは自分のカルテに目線を向けたまま言った。
「どうって?」
あたしは今日担当した人の顔を思い浮かべ、必死に思い出してはカットの項目を埋める。
「夜かなり遊んでるって聞いたけど」
あたしもカルテから目を離さずに答えた。
「あー噂になってるらしいね」
「そんなに男とっかえひっかえしてるの?」
…………。
「とっかえひっかえねえ。喰い逃げはとりあえずしてないけど」
「楽しい?」
あたしはふと、北澤さんの方を見た。
北澤さんもカルテから目は離してないけど、なんだか悲しそうな顔をしていた。
あたしの目線を感じたのか、頭が動いて北澤さんがあたしの方を見る気がして、あたしは思わず知らぬふりをした。