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優しいキスをして

第3章 3度目のキス……美優の闇

あたしは本屋の前で煙草を吸っていた。
とりあえず来た本屋ではそれらしきことが書かれているものは見当たらなかった。
ふと、思いついて携帯でググって見たら、めまいの原因は神経性かストレス性、もしくは過度のダイエットによって起こるというホームページを見つけた。
思い当たるものがあり過ぎて、なんとなく納得してしまった。ひとまず何もしないわけにもいかないので隣のドラッグストアでめまいに効果があるっぽい漢方薬を買って飲んでおいた。
……とりあえず、食欲はないけど、なんか食べとかないと……。よし!コンビニ行こう。
あたしは思い立つと車に戻るため煙草の火を消した。
「おねえさん、なにしてんの?誰かと待ち合わせ?」
後から声をかけられた。
一瞬ただのナンパか?とも思ったが、聞き覚えのある声だった。
むしろ、あたしが会いたくてやまない人の声に似すぎていた。
信じられない…………。
……まさかっ。
あたしは振り向いて声の持ち主を見つめた。
「……百……夜?……百夜(ゆや)、なの?」
相手はびっくりしていた。
「え?百夜のこと、知ってるの?」
どうやら別人みたいだった。
でも、よく似てる……。
一瞬百夜と見間違えたが、百夜よりも少し背が低くて、いくらか年下で、どちらかとゆーとあたしとそんなに年も変わらなそうだった。それに着ているものもカジュアルで、百夜とものの好みも違うように見えた。
あたしは、ポツリと答えた。
「前に……付き合ったことあったから」
「へぇー……百夜の元カノかぁ……。こりゃいいや……」
目の前の男は口元を片方だけ引き上げて酷薄そうに笑った気がした。
……気のせいかな。
「…………」
男は愛想よく笑って言った。
「ねえ、よかったらこれからどこか入って話さない?」
「……いいよ」
あたしはなんとなく返事をしてしまった。
それから男の車に乗り込み、近くのファミレスに入った。
車の中で、男はマサキと言う名前だと教えてくれた。

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