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優しいキスをして

第3章 3度目のキス……美優の闇

「え?えええええぇ!!!」
マサキは一瞬止まったと思ったら絶叫した。
「ちょっと!声が大きいよ!」
周りの他の人にジロジロ見られた。
あたしもさすがに恥ずかしかった。
「ご、ごめん……。それって最近まで処女だったって言うこと?」
「まあ、そうゆーこと。あ、今は違うよ!」
「そ、そうだよなー……。こんな色気ぷんぷんの子が処女ってこと、ないもんな……」
マサキはハハハっとちょっとひきつり笑いをしていた。あたしは、俯いて言った。
「でも、百夜じゃないの。初めての人は」
「じゃあ、次の彼氏?」
マサキは肩肘をついて、あたしの話にまた耳を傾けた。
あたしはマサキの言葉を聞いて、すぐに栄太を思い浮かべた。
「んー、友達。……かな」
「あー、セフレかなにか?」
「まあ、一般的にはそうなるのかな…………」
「……美優さ、百夜と別れてから結構遊んだろ?」
「そうだね。今も進行形」
マサキは目を見開いた。
「……それって」
あたしはまたコーヒーを一口啜った。
「毎日男漁り中。今日は相手が仕事が残業になっちゃったからってキャンセルされちゃったけど」
「じゃあ、今日は暇なんだ?」
マサキは心持ち片方の口元を引き上げた。
「そう、これから漁りに行く予定」
「じゃあ、俺としてみない?」
……あたしはマサキをじっと見つめた。
顔つきは百夜にそっくりだけど、百夜はこんなふうに笑わなかった。こんな翳い、危険な香りはしなかった。まるで悪い夢を見ているよう……。
「……今からどう?」
「マサキと?冗談。百夜に似てるヤツなんてやだよ」
マサキはいきなりダンッ!と激しくテーブルを叩いた。
「俺は俺だって言ったろ!百夜と比べんなよ!」
あたしはコーヒーカップを受け皿においた。
「……そう、だったね。ごめん……。でも、似てるからどうしても百夜のことがよぎっちゃうんだ。だから……」
「それって、美優は百夜が今でも忘れられないわけ?」
「…………」
「百夜のことが忘れられないから、だから毎日男に抱かれてまぎらわしてるのか?」
「……そうだよ」
こんなに誰かにはっきり言われたことがなかったけど、その通りだった。

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