テキストサイズ

優しいキスをして

第3章 3度目のキス……美優の闇

女子高生2人はカットだけで、片方が一人ずつ担当し30分ほどで終わり、そのあとは全く来店の兆しがなく、また暇になってしまった。3番店は7時閉店のため、夕方6時半になって受付終了の時間を迎えると二人でお店の締め作業に入った。
大体の作業が終わり、北澤さんは最後にレジ金を数え、あたしは自分の売り上げ表を書いていた。
北澤さんが数え終わったお金をしまいながら言った。
「…………。最近、なんか、彼氏できたんだって?」
「は?彼氏?いないよ?」
あたしは予想外のことを言われ、少しびっくりしながら北澤さんを見た。
なんでそうなる?どこから出たんだそんな噂。
「そうなの?なんか田橋が家の近くの本屋あたりで彼氏っぽい男といるとこ見たって」
あー……マサキだな、それ。
確かにいつもマサキと待ち合わせしている辺りは田橋さんの家の近くだった。
あたしはまた売り上げ表に向き直った。
「あー……彼氏じゃないよ」
「ふーん。えらいイケメンらしいじゃん」
「まー一般的にイケメンなんだろーけど」
顔までチェックしてたか……。
確かにマサキは俗に言うイケメンの部類には入るけど。田橋さん恐るべし……。
「……ふーん。でもいい感じなんでしょ?」
あたしは思わず手が止まってしまった。
いい感じ?
確かにマサキに告白はされたけど、あたしは付き合う気はないし。そうするべきでもない。
でもマサキはあたしをあきらめないと言った。
あたしもこの先好きになるのかな…………?それに……。
「……………わかんない。てゆーか、ずっとあたし好きな人いるんだよね、実は」
北澤さんは少し眉間に皺を寄せた。
「……なにそれ?じゃあなんで遊んでんの?」
あたしは無意識に百夜とのことを思い返していた。
「その人と別れたから?……でも、もうダメなんだけどね。あたしフラレたし、嫌われてるみたいだし」
「……元カレなの?」
「……そう。……まだ、……」
あたしは言いかけてハッとした。
北澤さんに何話してんだ。
……恥ずかしすぎっ。
「ごめん!今の聞かなかったことにして!?ね?」
「……なんで?別に誰にも言わないし」
「ホントに誰にも言わないで!てゆーか恥ずかしすぎるから忘れて?」
北澤さんはいつもと変わらない様子なのに、あたしは恥ずかしさに耐えかね、勢い込んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ