無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「もう、いいでしょ……離して」
あたしは涙が流れそうになり、強引にその手を振りほどいて、後ろを向いて歩き出した。
あたしのことは、もうほっといて…………。
あたしは流れ出した涙を指で軽く拭いながら歩いた。
あたしはもう、戻れないんだから…………。
引き返すことなんっ…………。
いきなり後ろからガシッと強い力で肩を掴まれ、無理矢理後ろを向かされた。
「じゃあ、俺が埋めてやる」
外灯に顔を照らされた北澤さんが言った。その目はあたしの目を見て、はっきり言った。
信じられなかった……。
「なっ……にっ、言ってんの？」
北澤さんはあたしの目を見つめて言った。
「俺が埋めてやるから行くな」
「……っ」




あたしと北澤さんは近くのラブホに入った。あたしは適当に荷物を置き、上着を脱ぐとテレビを着けた。
北澤さんが静かに言った。
「シャワーでも、軽く浴びる？」
「じゃああたし先に入るね」
答えるとあたしはまっすぐお風呂に向かった。手早く脱いでシャワーを浴びる。
北澤さん、何考えてるんだろ……？
本気なの…………？
あれから、北澤さんの行動は早かった。
あたしに無理矢理了解させると自分の約束の断りの電話をすぐに入れ、あたしに自分の車の後ろからついてこいと言った。後ろをとりあえず運転し、北澤さんが入っていったところがここだった。
お風呂から出ると髪を軽く拭いてホテルのバスローブを羽織り、そのまま出た。
「北澤さんも入れば？」
「……うん、俺も汗かいたし、入る」
北澤さんはあたしと目が合うと自分から視線を反らしたまま、脱衣場に入っていった。
北澤さんがドアを閉めたのを見ると、あたしは自分のバッグから携帯を出し、キングサイズのベッドに横になり、今日会うはずだった相手にメールした。形だけの丁重なごめんねメールを送ると、北澤さんがお風呂から出た音が聞こえた。
他のセフレからのメールも断りメールを送っていると、北澤さんがあたしと同じ、やはりホテルのバスローブを羽織って出てきた。
北澤さんは濡れた髪をタオルで拭いている。
あたしは携帯をいじりながら言った。
「北澤さん、やめとくなら今のうちだよ？」
「なんで？」
「ホントはあたし、北澤さんとはそーゆー関係になりたくないし」
あたしは携帯をサイドテーブルに置いた。
「……俺じゃ役不足？」
北澤さんは少し不安そうな顔をした。