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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

あたしは起き上がると北澤さんの方を向いてベッドに腰掛けた。
「……違うよ。あたしなんかやめた方がいいってこと」
「ここまできて何言ってんの……」
「だって北澤さん、なんか自棄な感じだったし」
そう言って北澤さんの顔をなんとなしに見ると、まだ髪をガシガシ拭きながら俯いたまま言った。
「言ったろ?俺がそうしたいんだって」
「北澤さんまでみんなに後ろ指指されることないって」
「なんでそんなこと言うの?」
いきなり目線があった。目が合うとなんだか自分から目を反らしてしまった。あたしはひざを腕で抱えて伏し目がちに言った。
「……あたしと関わると、北澤さんまで変な噂になるし。陰口たたかれるのはあたしだけで充分だから」
少し視線を感じたが北澤さんは何かを考えているようで、頭を拭いていたタオルを肩にかけるとやがて口を開いた。
「……ここでやめたら、その足でどこかの男のとこに行くんでしょ?」
「まあ、そうなるだろうね」
あたしは軽く笑った。自分を蔑むように。
「じゃあやめない」
「ねえ、まだ引き返せるから」
「黙れよ……」
いきなり唇を塞がれた。後頭部を片手で押さえられ、短いけれども甘いキスだった。
唇を離すと北澤さんはそのままあたしのすぐ横に座って、あたしの顔を覗き込んだ。
「俺が埋めてやるって言ったろ?やめるなんて言うなよ」
「だって……」
あたしは北澤さんの真剣な目線に耐えられず、顔を背けてしまった。
「俺は何を言われたっていい。俺はそれでいいんだよ」
「こんな淫乱女と、やめた方がいいって」
「そんなふうに言うな」
北澤さんは真剣だ……。
なんで?……なんでそこまでするの?
あたしなんかどうなったっていいじゃない。だってあたしは…………
あたしは膝を抱える腕に力が入った。
「……あたし、やっぱりやだよ。北澤さんとはそーゆー関係になりたくない」
「…………なんで?」
「だって、あたしは……汚い女だから。いまだに昔の男に囚われてて、あたしを好きになってくれた人でも、忘れるために利用しちゃうんだもん。あたしは、そんな女なんだよ。最低でしょ?」
「……そんなに苦しむほど、その男のことが好きなの?」

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