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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

「……ねえ」
北澤さんがくぐもったような声で静かに言った。
あたしは見上げる形で上目遣いになって答えた。
「なに?」
「…………付き合ってみる?」
「え?」
あたしは驚きのあまり目を見開いた。
北澤さんは少し頬を染めて言いずらそうにしたが、やがてポツリと言った。
「その、……セフレとかはやっぱりやだから」
……あたしが、北澤さんと、……。
正直、一度片想いした人に言われたのは嬉しいけど、でも……。
あたしは北澤さんから離れるように起き上がって膝を抱えた。
「付き合うのは……怖い」
北澤さんも上半身だけ起き上がってあたしの顔を覗き込んだ。その顔は、何かに耐えるような顔をしていた。
「……じゃあ、セフレの方がいいってこと?」
「……それもやだ」
あたしの答えに北澤さんはホッとした顔をした。
でも、これはあたしの正直な気持ち……。
付き合うのも怖いけど、セフレも嫌だ。
……あたしはどうしたいの……?
「……俺のこと、今はどう思ってる?」
「好き……なのかな?ごめん、よくわかんない。正直、……付き合う?って言われたのは嬉しい。片想いしたこともあったし」
「じゃあなんで?」
北澤さんはあたしの肩を抱いて、あたしを見つめる。あたしはシーツを両手で掴んだ。
「無理……しないで?一度きりの関係でもいいんだよ?あたし……。こんなんだし……」
「俺はそんなつもりで誘ったんじゃないっ」
北澤さんのあたしの肩に触れている手が震えてる。
怒った……?
あたしは真っ直ぐ北澤さんを見つめた。
「……だって……、北澤さんは、あたしのこと同情でヤったんじゃないの?」
北澤さんははあ~……と深くため息をついた。
「ヤったとか言うなって。同情なんかであんなこと言わないし、……あんなに、…………するかよ……っ」

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