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最後は少し頬を染めて言葉を詰まらせた。
「じゃあ……」
なんで？と言おうとすると、ふいに、北澤さんの右手のひらがあたしの左頬を包み、また唇を重ねた。
それは短いけれども切ないキスで、切なさが重ねた唇から伝わってきた気がした。
…………っ。
北澤さん、本気……、なの、……？
「……わかるでしょ？」
唇を離した北澤さんは切なげに、妖艶な目であたしを見つめる。
でも、あたしの心にはまだ百夜を好きな気持ちが根づいてる。
あたしは……。
あたしが何も言えないでいると、あたしの心を読んだように言った。
「俺が言ったんだ。……昔の男をすぐに忘れろなんて言わない。そのうち、……好きに、なってくれればいい」
「……っ」
北澤さんは、真剣な表情で静かにあたしを見つめた。その目には嘘も偽りも感じられなかった。北澤さんなら、過去を忘れられる気がする…………。
あたしが少し微笑んで見つめると、北澤さんは急に頬を染めて、あたしを強く抱き締めた。あたしを抱き締めたまま、思いきったように言った。
「てゆーか好きにさせる！」
あたしも北澤さんの胸に体を預けた。
北澤さんに包まれると、なぜかすごく安心感を感じる。とても、心地いい。あたしは穏やかに笑って言った。
「……すごい自信だね？」
「……本気だからなっ。適当な気持ちでこんなこと俺言えないし」
そう言うと、北澤さんのあたしを抱き締める腕に力が入った気がした。
「……あたし、北澤さんなら大丈夫かも」
「そこは嘘でも好きになるって言ってよ」
北澤さんはちょっと拗ねたように言った。あたしが胸を少し押し返すと、北澤さんの力が少し緩んだ。
あたしは北澤さんを真っ正面に見て言った。
「あたし……好きになるよ」
あたしは延び上がって触れるだけのキスをした。
「絶対にさせるから……」
北澤さんが切なげにあたしを見つめた。
あたしたちはどちらからともなく抱き締め合い、また唇を重ねた。