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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

あたしたちは、その夜から付き合うことになった。
明け方別れを惜しみながらも家に帰った。
次の日が休みならよかったけど、全体会議の次の日は月始めの店長会議と決まっている。当然仕事のため朝はモーニングコールをし合ってどうにか起きて仕事へ行った。
また夜になれば会えることはわかっていながらも一日中うきうきとした気持ちでいっぱいだった。
夕方、あたしは4番店に引き継ぎのため訪れた。
「須藤さん、なんか今日は爽やかですね?いつもの気だるさがないってゆーか……」
菜月ちゃんはあたしをやたらジロジロ見て言った。
あたしはいつもと変わらず睡眠不足でだるいのだが……。今日は特に……。
あたしはあくびをしながら気のない返事をする。
「……そう?」
「なんか、キラキラしてる……」
「キラキラ???」
「なんか輝いてますぅ」
あたしから見たら菜月ちゃんの目の方がキラキラしてるわ……。
「菜月ちゃん、そんなこと行っても何も出ないよ?」
「ホントですよぉ!」
菜月ちゃんは鼻息を荒くして勢いづいて言った。
朝いつも通り出勤したときもスタッフのみんなに似たようなことを言われた。
すごい寝不足だと言うのに肌が艶々してるとか、表情が明るくなったとか。
相手が違うとこうも違うものなのかな…………。
そんなことを言われたのは百夜と付き合ったとき以来だった。
あたしが到着して15分も経つと、お店は突然混み始めた。
瞬く間にパーマとカラーを施した人が溢れ、何人かは待ちのため外出してもらい、結局全部終わったのは8時過ぎ。菜月ちゃんもよく動いてくれたが終わるともうぐったりだった。最後のパーマのアフターカットに入ってから菜月ちゃんに締めをお願いしたが、彼女もなかなか有能だ。あたしが最後の客を見送ると締めをすぐに終わらせた。
そのあと菜月ちゃんがタオルを干す間、あたしは受け持った12人分のカルテを記憶を手繰り寄せ、書いた。
菜月ちゃんとは初めての忙しさで、自分もくたくただったがまだ入社1年目の菜月ちゃんの労を労い、煙草を吸いながら近くの自販機で買ったきたジュースを渡した。
「よく頑張ったね、助かったよ」と言うと、菜月ちゃんはびっくりしていたが少し涙声で
「ありがとうございます」と答えた。

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