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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

やっぱり、気持ちに余裕があるのだろうか?昨日までのあたしならそこまでやっていない気がする……。
店を出ると駐車場で菜月ちゃんとは別れたが、あたしはこれから本店に行かなければならなかった。
疲労感と眠さでいっぱいだったが、気持ちは少しウキウキしていた。
北澤さんに会えるし……。
つい、昨日の情熱的な眼差しの北澤さんを思い出してしまった。
あたし、……何考えてんの!
あたしは一人、赤くなった。
車の中で化粧直しを手早くすると、重い体を引きずりながらも向かった。


本店の駐車場に到着したのは9持を回ったころだった。
あぁー、疲れた……。
もう会議、始まってるかなあ……。まだだったりして…………。……。
あたしははぁ……とため息をつきつつ駐車場からフラフラと歩いていた。
「お疲れっ」
いきなり後ろから背中を叩かれた。
あたしは弾みで前につんのめった。びっくりしたけど、あたしはすぐにわかった。
「もう!びっくりしたよ!」
あたしが振り向くと、北澤さんはイタズラした子供みたいな笑顔で笑う。
「だいぶお疲れみたいだね」
「引き継ぎで4番店行ったら3時間半で12人だもん……。疲れたよ」
あたしはげんなりして言った。
「うわっ。お疲れさん。懐かしいなー、俺も転勤族のときはそんなのあったなぁ」
「そーゆー北澤さんも来るの遅いじゃん、忙しかった?」

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