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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

北澤さんはいつものように涼しい顔をしていた。
「いや、夕方6時の予約のストパーが2人いただけ。お前が来ない日はだいたい夕方暇だから」
北澤さんは昨日からあたしを時々お前呼ばわりする。
彼女だとそーゆーふうに言うんだ……。
あたし、彼女なんだもんねっ。
「どおりで爽やかな顔してると思った」
「幸いカットが午前中来なかったから午前中はずっと寝てたし」
北澤さんはニカッと笑って余裕な感じだ。
「なにそれー!!ズルイー!」
「慰めてあげよっか?」
「うん、慰めてー」
あたしはノリで肩にちょっと凭れて、ふざけて甘えてみた。
「……じゃあ、会議終わったら帰らないで待ってて?」
「え……?」
北澤さんが掠れた声で耳元で囁いた。
思わず上向いて呟いたあたしと目が合うと、軽くおでこにキスした。
本店の裏口に手をかけると、北澤さんは妖しく微笑んで言った。
「二人一緒に入ると不味いから、一服吸ったらおいで」
「う……うん」
あたしが少し動揺しながらも返事すると、北澤さんはにこっと笑って裏口のドアを開けてさっさと入っていった。
なんなのっ……。
北澤さんて、あんな色っぽかったっけ……?
あたしはそんなことを考えながら煙草に火をつけた。
裏口の前に座り込む。
あたしが変なスイッチでも入れてしまったのだろうか?それとも、そういったことをあたしが喜ぶと思ってあたしにあわせてるのかな?
まあ、求められるは、正直嬉しいけど……。
あたしは気づくと口許がにやけてしまっていた。
いかん、いかん……!
あたしは煙草の火を消しドアを開ける。
ため息のような深呼吸を一度し、階段を登っていった。

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