テキストサイズ

優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

そりゃ、そうだよなぁ……。
それはマネージャーとしては見過ごせないだろう。
剣城さんはまだ少し不安気な顔。
「考え過ぎですよ」
北澤さんは微笑を浮かべてる。
「そーんなの、ないですって!」
あたしはハハハと笑い飛ばすように言った。
「……だよなぁ!」
剣城さんの顔がぱっ!とほぐれて、あたしにつられたように大声で笑った。
「そうですよぉー」
「……はぁ、俺の思いすごしでよかったよ。まあ、俺としては別に二人が付き合う分には構わないんだけどね。ただ、営業中もはまずいからな」
「大丈夫です。これからもないですからっ」
あたしは顔の横で軽く手をヒラヒラ振って受け流すように笑い飛ばした。
それを見て剣城さんも安心したようだ 。
「じゃ、お疲れ!」
ドアを開けると爽やかな笑顔で片手を上げて出ていった。
…とん。
ドアが閉まった。
はあ……。まさか、あの鈍感な剣城さんが感づくなんて。これはヤバい。
「……さてと」
いきなり北澤さんは真顔になって後ろを振り返ると、深く息を吐き出して言った。
「おい、いつまで隠れてんだよ。おまえら」
え?
「さすが北澤さん」
大沢さんの声が聞こえると大沢さんと田橋さんが階段の陰から出てきた。
「で、どうなの?デキてるの?どうなの!?」
北澤さんはめんどくさそうにまた大きなため息をついた。
「全くお前らは……。どうしようもねぇな」
「……田橋さんまで」
あたしは頭痛がして思わず額を押さえた。
大沢さんはにやにやしながら近づいてきた。
「どう見たって妖しいし。昨日二人でなんかあったでしょ?」
「なんか言い合ってたと思ったら二人とも車乗ってどっか行っちゃうしー」
田橋さんに至ってはセリフのジェスチャー付きだ。
「いや、なんもないですって」
あたしは笑って誤魔化した。
この二人にバレたら絶対アウトだ。
絶対に噂のネタにされてしまう。
「ホントにぃ?ホントにご飯だけ?」
「北澤さん、どうなんスか♪?」
あー!大沢さんっ。
北澤さんに聞かないで!
北澤さん嘘下手なんだからーっ!
「ホントにご飯だけですよーっ。ねえ、北澤さん?」
北澤さんは憮然とした態度で一言。
「ラブホ行った」
………………。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ