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優しいキスをして

第4章 躯で躯を結ぶ

ちょうどそこであたしの車が目の前に見えて、二人して立ち止まった。
「明日、休みでしょ?」
北澤さんは妖しく微笑んだ。
「うん…………」
あたしはこの目についドキッとしてしまう。
やっぱり、かっこいいなぁ………。
あたしは目が離せなくなる。
「俺も。だから今日はずっと一緒にいられる」
北澤さんは目を細めて微笑んだ。
素直に嬉しかった……。
一緒にいたいと思ってくれてるんだよね……?
あたしも……、いたいよ…………。でも。
「とりあえず何か食べない?俺お腹空いちゃった」
北澤さんはお腹をさすって空腹のアピールをする。
「……うん」
「誰かに見られたらヤバいし、適当に居酒屋でも行こっか。個室あるし」
「北澤さん、………あたしのこと、好き?」
気づくと口をついて出ていた。
唐突なあたしの言葉に、北澤さんは目を見開いて、頬を染めた。
「……なに?わかってるでしょ?」
一度口にするともう止まらなかった。あたしは、きっと冴えない顔をしてる。
「じゃあ……、なんで言ってくれないの?キスしたり抱き締めたりしてくれるけど、あたしまだ一度も言われてない」
あたしは昨日からずっと気になってたことを言ってしまった。北澤さんの示す仕草の一つ一つから好きという気持ちは伝わるけれど、言葉での表現は一度もなかった。
実際好きだとは一回も言われていなかったのだ。
気持ちはわかってはいるけれど、確かめずにはいられない。
あたしはもう裏切られたくないから。もし違うのなら傷は浅い内の方がいい。
あたしが本気になる前に……。
北澤さんはあたしから顔も目線も反らして鼻から下を空いてる方の手のひらで隠した。
「だって……言いたいけど……、なんか、俺だけ言うの悔しいし。恥ずかしいんだもん」
あっ……。
「そう……、だよね……。ごめん…………」
あたしは俯いた。
自分はまだ本気じゃないくせに、相手がその気がないと嫌なんて…………あたし、すごい勝手だ。
自分のことばっかりだ。最低……。
北澤さんは俯くあたしを気遣ってか、あたしの顔を覗き込んで言った。
「…………不安?言わないと」
……言ってる北澤さんの方が不安げな顔してるよ。ごめんね、あたしこんなズルい女で。
「……ううん。……大丈夫。変なこと言ってごめんね?じゃあ、あとついてくから」

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