優しいキスをして
第5章 闇の向こうの光
あたしは言い終わるとはあ、はあ……と息切れしていた。気づけば涙が目に滲み、頬に滴が流れていた。
マサキはしばらく沈黙していたが、あたしが次から次へ溢れ出した涙を片手で拭っているとまた、話始めた。
マサキは深くため息を漏らすとあくまで冷静にしゃべった。
『…………美優。一度会って話そう。電話じゃ埒があかない。今日ダメか?』
絶対に行くもんか…………!
「やだ。どうせ無理矢理ホテルに連れ込むでしょ……」
『……そんなことしない。約束する』
「……本当に?」
本当に話すだけなの……?
あたしが強く念を押すとマサキはまたため息を漏らした。
『したら警察でもなんでも呼べばいい』
「…………」
『お前がたとえ約束の場所に来なくても俺はずっと待つぞ』
マサキの声は真剣だ。
「……わかった」
『じゃあ、初めて会った本屋の駐車場で9時な』
「わかった。じゃあ……」
電話を切った。
あとで北澤さんに今日は用があるからって言わなくちゃ。
あたしは涙を拭いながら道具セットを持って裏口に向かって歩いた。
俯いて裏口のドアの前に行くと、男物のスニーカーが目に入った。
ハッとして顔を上げると、北澤さんが立っていた。
あたしは目を見開いた。
「なんで……、そんなとこ立ってるの?」
あたしは絶望感を覚えた。
ああ、あたし、もうここで終わるんだ……。
北澤さんは特に表情も変えずに立ったまま言った。
「いつもより遅いなと思って、外覗いたら電話してたから」
「…………そう」
話し、聞いてたんだ。
きっと、嫌われた。もう、終わりだ……。
さすがにこんな女呆れたよね…………。
あたしはまた滲んで来た涙を俯いて目を強く瞑って隠した。
こんなあたしでごめんね……。
さよなら…………。
「ホントは……行かせたくないけど、行ってきなよ」
北澤さんのすぐ横を通りすぎようとしたあたしは自分の耳を疑った。
「…………っ」
「何かあったらすぐに連絡するんだよ?」
あたしと目が合うと、北澤さんは優しく微笑んでくれた。
うそ…………。
「許してくれるの?」
あたしは溢れる涙も構わず、見上げて言った。
北澤さんは穏やかな笑顔で頷くと、ふわりとあたしを抱き寄せた。
「充分伝わったから。お前の気持ちは」
「…………っ」
「ちゃんと、ケリ着けてくるつもりなんだろ?」
あたしは嗚咽で声が出ず、首をただただ振って頷いた。
マサキはしばらく沈黙していたが、あたしが次から次へ溢れ出した涙を片手で拭っているとまた、話始めた。
マサキは深くため息を漏らすとあくまで冷静にしゃべった。
『…………美優。一度会って話そう。電話じゃ埒があかない。今日ダメか?』
絶対に行くもんか…………!
「やだ。どうせ無理矢理ホテルに連れ込むでしょ……」
『……そんなことしない。約束する』
「……本当に?」
本当に話すだけなの……?
あたしが強く念を押すとマサキはまたため息を漏らした。
『したら警察でもなんでも呼べばいい』
「…………」
『お前がたとえ約束の場所に来なくても俺はずっと待つぞ』
マサキの声は真剣だ。
「……わかった」
『じゃあ、初めて会った本屋の駐車場で9時な』
「わかった。じゃあ……」
電話を切った。
あとで北澤さんに今日は用があるからって言わなくちゃ。
あたしは涙を拭いながら道具セットを持って裏口に向かって歩いた。
俯いて裏口のドアの前に行くと、男物のスニーカーが目に入った。
ハッとして顔を上げると、北澤さんが立っていた。
あたしは目を見開いた。
「なんで……、そんなとこ立ってるの?」
あたしは絶望感を覚えた。
ああ、あたし、もうここで終わるんだ……。
北澤さんは特に表情も変えずに立ったまま言った。
「いつもより遅いなと思って、外覗いたら電話してたから」
「…………そう」
話し、聞いてたんだ。
きっと、嫌われた。もう、終わりだ……。
さすがにこんな女呆れたよね…………。
あたしはまた滲んで来た涙を俯いて目を強く瞑って隠した。
こんなあたしでごめんね……。
さよなら…………。
「ホントは……行かせたくないけど、行ってきなよ」
北澤さんのすぐ横を通りすぎようとしたあたしは自分の耳を疑った。
「…………っ」
「何かあったらすぐに連絡するんだよ?」
あたしと目が合うと、北澤さんは優しく微笑んでくれた。
うそ…………。
「許してくれるの?」
あたしは溢れる涙も構わず、見上げて言った。
北澤さんは穏やかな笑顔で頷くと、ふわりとあたしを抱き寄せた。
「充分伝わったから。お前の気持ちは」
「…………っ」
「ちゃんと、ケリ着けてくるつもりなんだろ?」
あたしは嗚咽で声が出ず、首をただただ振って頷いた。