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あたしは約束の9時より少し前に着いて、マサキを待っていた。なるべく、人目につかぬようにと駐車場の隅で立ってた。
メールで到着したこととどの辺りにいるかをマサキにさっき送っておいた。
……頑張れあたしっ。今日で絶対決着つけるんだから。
あたしがそんなことを考えながら煙草に火をつけると、ふと、前から真っ直ぐ女の人があたしに近づいてきた。
細身で綺麗な、洗練された装いをした美人だった。あたしとそんなに年は変わらなそうだから、高校の時の知り合い？とも思ったが、思い当たる子はいない。
この人にはなんとなく関わってはいけないような気がした。どことなく変な雰囲気を醸し出し出している。
「美優さんですか？」
あたしの数メートル手前で立ち止まると女の人は伺うように言った。華やかな笑顔さえ浮かべながら。
………知らない人だけど、なんであたしの名前知ってるの？
「……はい。そうですけど、あなたは？」
あたしはハッとした。女の人の右手にはナイフが握られてる。
女の人の表情がみるみる内に変わった。
綺麗な顔を怒りで歪ませて、顔が綺麗なだけに恐ろしいくらいの気迫を感じた。
「あんたね……。あんたが美優なのね？あんたが悪いのよ、あんたがいるから彼は私を捨てたの。……全部っ、あんたのせいよ！」
女の人はあたしにナイフを向けて飛びかかってきた。
……一体なんだって言うの？
あたしは仕事用に履いてるショートブーツだったため、容易に避けられた。相手はヒールのあるパンプス。しかし油断はならなそうだ。
女の人はまたすぐに向かってきた。
……セフレだった誰かの彼女？
それだったらもしかしたら恨みを買ったかもしれなかった。実際、関係を切るのに何人かに渋られたからだ。
「そんな可愛い顔して、その体で何人の男と寝てきたの？どんな手で彼の心を奪ったのよ！」
あたしはまた避けると安全な間を取って、女の人に両手のひらを向けて待ってと手振りをした。
「ちょっと待って！待ってよ！彼って、だれ？」
女の人は一瞬止まったと思うと、全身を怒りで震えさせていた。
「……いい加減にしてよ…………っ」
「え？」
女の人があたしをきっと睨んだ。その顔は烈火の如く、鬼気迫るものがあった。
「とぼけるのもいい加減にしなさいよっ！！百夜を返して！」
えっ…………百夜？？……だって？