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優しいキスをして

第5章 闇の向こうの光

あたしは誤解されたと思って少し涙声になってしまった。
「ごまかしてなんかっ、……」
「…………っ」
北澤さんは何も言わない。
あたしは嗚咽を我慢して答えた。
「本当に、北澤さんのことが好き。好きなのっ……。ずっと、こうしていたい……」
「……ホントに?そう思ってる?」
北澤さんの声は窺っているように聞こえた。
疑ってるの……?
「うん……」
「…………じゃあ、『北澤さん』はもうやめて?」
「……?」
「ちゃんと、名前で呼んで?」
北澤さんはあたしの背中に回した手を緩めて、あたしの顔を覗き込んだ。
ちょっと色っぽい視線だった。
あたしは胸がどきどきして頬が熱くなった。でも…………。
「なんか、恥ずかしいよ……」
「なんで?」
あたしは見上げて思ったままのことを言った。
「だって、いきなり智春なんて、……ともくん、…………とかでもいい?」
つい上目遣いになってしまった。
北澤さんは頬を染めた。
「……いいよ//」
そう言って北澤さんは鼻から下を手のひらで隠した。
……恥ずかしいといつもそうゆー仕草するんだね。あたしは思わずックスと笑って言った。
「ともくん、好きだよ……」
北澤さんはみるみる顔を赤くした。
「俺も……」
二人で見つめ合うと自然と唇が重なった。
重なるキスはどんどん深くなった。
甘くて、でも激しくて、…………。
お互いに気持ちが溢れて、留まることを知らなかった。


………………。


ようやく唇を離すと、北澤さんはあたしを見つめた。
目線を反らしたと思うと深く息を吐いた。
「はあぁ…………。ヤバイっ」
あたしは余韻で潤んだ目で見上げて言った。
「……どうしたの?」
北澤さんはさらに鼻から下を手のひらで隠して言った。
あたしは黙って見つめる。
「…………可愛いって思っただけ」
「えっ?」
「お前が。可愛いくてしょうがないのっ……」
そう言って鼻を摘ままれた。
「いはいぃ~(痛いぃ~ )」
痛がるあたしを見て北澤さんはックスと笑って、あたしの横に寝転がると頬杖をついてあたしを見つめた。
あたしもイッたあとの気だるい重い体ごと北澤さんの方を向く。
すると、当然のように北澤さんはあたしの素肌の背中に片手を回し自分の胸に引き寄せた。

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