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優しいキスをして

第6章 秘密の恋人たち

ともくんは妖しく見つめてくる。
あたしはその顔を見てちょっとドキドキしてしまった。
「……ううん//泊まるのは今度の店長会議の日でいいよ。……次の日、休みでしょ?」
「そうだけど、いいのか?」
「うん、大丈夫♪早く行こ」
「ああ……、じゃああとでな」
一度別れてお互い車に乗り込むとあたしは本店を出て、いつも待ち合わせてる近くのレジャー施設の駐車場に向かった。


俺はいつも通りわざと遠回りして美優との待ち合わせ場所に向かっていた。
付き合ったばかりのころのように毎夜ホテルに行くことはなくなったが、それでも週に3、4回はこうして忍び会っていた。
初めて美優にキスされた日より前から考えると、実際、付き合うことになるとは思っても見なかった。
日に日にだんだん壊れていく美優を見かける度にどうしてだかほっとけなくなり、俺は美優を3ヶ月前のあの夜引き止めた。
たぶん、本当はだいぶ前から好きになってたのだろうと思う。
あの夜は本当の美優を知るとさらに恋しさが募り、ほとんど勢いで抱いてしまった。
……ただ、他の男のところには行かせたくない、俺で少しは気持ちが収まるのならと思ったが、俺の方が好きでたまらなくなってしまった。
こんなことを言うと美優に怒られるかもしれないが、今までの女は薄っぺらで見た目は良くても大したことなかった。俺は遊び尽くした結果、女に飽きてしまっていた。
でも、美優は今までの女とは違う。
愛しても愛しても足りない。見た目とは違って純粋で、そのくせ隙だらけで危なっかしくてほっとけない。絶対離したくない……。
そんな女だ。俺は久しぶりに本当に好きな人にめぐりあった気がした。
一度好きになったのなら、もう一度好きになってほしいと思った……。
「あー……失敗した」
……なんなの。今日超混んでんじゃん。美優、もうとっくに着いて待ってんだろうなぁ……。
俺はとりあえず横道に入って進路を変更することにした。
たまたま曲がったそこは抜け道だったようで、そのあとはすんなり行くことができた。
俺は少し飛ばして目的地に向かう。
待ち合わせはいつも決まって施設から一番遠いエリアで人通りが少ないところだった。

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