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しのぶ

第6章 6・遺恨の花

 
「分からないまま全てが終わってしまえば、心に棘が残るでしょう。今日は、あなたが疑問に思う事全てを話に来たんです」

「全てを……?」

「先程あなたが仰った通り、もはや小川家に弓引く理由はありません。つまり私はここであなたに害をなす必要性がありません。それでも私を疑い、すぐにでも罰したいなら、警護の者をお呼びください。しかし、全てを知りたいと望むなら――どうか少しの間、私に時間をください」

 志信のした事を考えれば、すぐに配下を呼び寄せ志信を取り押さえ、速やかに斬首させるべきである。元康には、そうしても構わない理由があった。

「……本当に、全てを話すのだな」

 だが、元康は大声を上げず志信に聞き返す。志信が深く頷けば、顔を上げて改めて志信と目を合わせた。

「ならば答えろ。お前は、一体何者なんだ?」

 志信は腹を決めた元康に、微笑みを零す。元康に向ける温かい眼差しは、とても裏切り者の瞳とは思えなかった。

「私は、伊賀の里で生まれた者です。母は身を売る下賎の女で、私が物心のつかない内に死にました。いえ、伊賀の上忍に、殺されたのです」
 

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