しのぶ
第6章 6・遺恨の花
「寺に?」
少年の声もまた凛としていて、山賊達は生臭坊主が悪趣味を好む気持ちをこの瞬間理解してしまう。少年は安堵したように爽やかな笑みを浮かべると、山賊の手をすぐに握った。
「ありがとうございます、ぼく、とても困っていたんです」
「よしよし、いい子だ。そうだ、腹は減っていないか? 寺に行く前に、皆で腹ごしらえをしようじゃないか。皆も、食いたいだろう」
山賊は少年を抱き上げると、仲間に目で合図する。答える山賊達は、口元をいやらしく釣り上げていた。
「皆さん優しくて助かります。ぼく、本当に困っていたんです」
少年が笑顔のまま語った瞬間、少年を抱き上げた山賊の背中に激痛が走る。
「なにせ初めての実戦なので、上手く皆殺し出来るかなって」
山賊の背に刺したくないを引き抜けば、背中から血が噴き出す。少年は驚く山賊を蹴り飛ばし腕の中から脱出すると、後ろに退きながら棒手裏剣を投げる。それは状況を掴みきれない山賊の仲間の眉間を貫き、地獄へと叩き落とした。
「この餓鬼……!」
山賊達がようやく少年を敵と認識し武器を取ると、少年は一変し瞳を凍らせる。