しのぶ
第7章 7・しのぶ
「納得がいかないなら……直接交渉してみる?」
すると輝元は、ようやく表情を和らげジュストの頭を撫でる。
「元康が志信を捨てると宣言したら、輝は全力で元康を保護するよ。けれどジュストが説得しても変わらないなら、取り潰し」
「輝サマ!」
「けれど、時間はそんなにあげられないよ。一週間後には、毛利家の使者を改めて送るから。使者が着いても元康が変わらなければ、諦めるんだよ」
厳しい条件でも、希望が残ればジュストに光が点る。力強く頷くと、ジュストはさっそく立ち上がった。
「必ず元康を説得し、輝サマの元へ帰ります。見ていてください!」
意気込むジュストの背中を見送ると、輝元は一人になった部屋で大きな溜め息を漏らす。
「さて、ジュストは輝の欲しい『答え』を持ってきてくれるかな」
輝元は、ジュストが自分の真意を察していない事は承知している。ジュストはただ知り合いである元康を助けるため、素直に動いているだけだ。
「信じてるよ、志信」
元康ではなく志信の名をぽつりと零すと、輝元は再び毛利家を守るため、徳川との交渉へと意気込んだ。