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しのぶ

第7章 7・しのぶ

 
 残された時間は少ない。ジュストは外見が明らかに南蛮人であるため、正式な使者として動いても何かといざこざに巻き込まれやすいのだ。人目を避けながらも急いで荒谷へ向かうが、じわじわと時間は削られていた。

 荒谷城に到着し中へ入ると、ジュストは刺々しい空気を感じる。前に元康の目付としてやってきた時も一揆の処理で重々しかったが、すれ違う人、遠巻きに見える人、それら全てがどこか満足していない顔をしていた。

(……取り潰し、か)

 荒谷を見た訳でもないのに、すぐに取り潰しを決めた輝元の判断は、決して行き過ぎではない。ジュストは嫌でもそう思い知らされた。

 希望が残されているのは、城下町は変わりがなかった事である。様々な災難はあったものの、城下町の人間は復興しようと力強く生きていた。すなわちそれは、元康が堕落せず荒谷を統治している証である。荒谷に根付く問題はただ一つ、志信の存在だけだと確信できた。

 ジュストの前に現れた元康は、城の人間と違い、不安も恐れもなく自信に満ちた表情をしている。以前会った時よりも頼りがいがありそうで、ジュストは彼が牢人になるのは惜しいと感じた。
 

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