しのぶ
第7章 7・しのぶ
その答えは予想していたが、改めて聞かされるとつい笑顔が曇ってしまう。だがここで輝元が憂い顔を見せれば、ジュストは自分を責めてしまう。輝元は意識して口角を上げ、さらに問いただした。
「伝えなければいけないのは、それだけ?」
「他には……あ、サタンが、輝サマに伝えろと言っていました」
「輝に伝言? 何かな」
するとジュストは姿勢を正すと、真っ直ぐ輝元を見据える。
「元康は、必ず志信が大名として復帰させる。何年かけても、持てる力の全てを使って今以上の大名にしてみせる。だから、心配するな――と」
輝元はそれを聞いた途端、無理して上げていた口角が下がってしまう。頬には、一筋の涙が伝っていた。
「輝サマ……」
「ありがとう、ジュスト。やっぱり元康は……ただ騙されただけじゃなかったんだね」
泣いているのに、輝元の表情はどこか清々しくもある。ジュストが首を傾げると、輝元は涙を拭い笑顔を見せた。
「じゃあ、志信に伝えなきゃね。鹿介にはなるなよ! って」
「シカノ、スケ?」
謎の名前に、更にジュストは戸惑う。だが輝元の笑顔に、何かわだかまりが解けた事は理解できた。