しのぶ
第1章 1・光への生還
「中々決定打が得られなかったので、最後まで……」
どうにか志信が声を絞り出すと、元康は噛みつくように志信の唇を奪い黙らせる。怒りに任せた口吸いは、呼吸すら許さず志信に絡みついた。
「っ、――っ!」
飲み込む余裕もなく、唾液が口からだらしなく伝う。志信の頭は次第に白い靄が掛かり、気が遠くなってきた。
「……この、馬鹿者!」
元康は志信が昏倒する間際で唇を離すと、焦点の定まらない志信に頭突きを食らわせる。そして意識もはっきりしないうちに、感情のまま言葉をぶちまけた。
「いくら情報のためとはいえ、体を許す奴があるか! お前は誰のものだ、それを考えれば、そんな真似は出来ないだろう!」
元康は志信の装束を全て剥ぐと、足を広げさせる。痕跡は見当たらないが、指を突き込めば、弛緩したそこが情事の後だと知らせていた。
「あっ、元康、様っ……!」
おそらく、報告を急ぐあまり、処理が大分雑だったのだろう。中は緩んでいるだけでなく僅かだが滑りが残っている。それがなんの滑りかと考えると、ますます元康の頭に血が上った。
「下の口は正直だな。男を受け入れて楽しんだそうだ」