しのぶ
第1章 1・光への生還
いくら遠慮がないと言っても、二人は主君と家臣。くわえる一物を無体に出来る仲ではない。志信はしばらく息苦しさと戸惑いに涙を滲ませていたが、覚悟を決めると口を支配するものに舌を這わせた。
「くっ……」
求めていた男が、整った顔を乱して奉仕する姿。視覚はもちろん、自身を包む熱にも元康は酔いしれる。欲望はすぐに上り詰めてしまいそうだが、夢心地であるこの時間をすぐに終わらせてしまうのは勿体無い。元康は僅かに腰を引き、吐息を漏らして誤魔化した。
そんな元康の気持ちを知ってか知らずか、志信は巧みに元康を追い詰める。男を知り尽くした手口は、おそらく忍びの術。赤子のように吸い付く唇は、元康を掴んで離さない。
「しの、もう……くっ、出すぞっ!」
迫る絶頂に、元康は志信に負担がかかると思いながらも、自らも腰を振り快感を得る。志信は苦しげな声を漏らしながらも喉の奥まで元康を受け入れ、吐精を受け止めた。
吐き出された元康の雄を、志信は喉を鳴らし飲み込む。その音につられ、つい元康も音を立てて唾を飲み込んでしまった。
「元康様……」