しのぶ
第2章 2・手紙
「手打ちになど出来る訳がないだろう!」
「ならば、私はどう責任を償えばいいのですか! 主君に刃を向けて咎めもなしでは、元康様の名誉に傷が付いてしまいます」
志信は元康の意志すら無視して、頑固に罰を求める。主君に忠実なあまり逆らう姿は、果たして真に忠実なのか。元康は業を煮やし、怒声を上げて志信を床に押し倒した。
「ああもう、分かった! 罰を与えられれば、それで満足なんだろう!?」
女物の着物を乱せば、現れるのは均整の取れた男の体。不釣り合いに見える二つは、思いの外劣情を煽る。元康は敢えて着物を残したまま、志信の平らな胸を撫でた。
「元康様、何を……」
「俺はお前のせいで、全身が凍りそうだ。ならばお前が責任を取って温かくするべきだろう。拒むのはなしだぞ、罰だからな」
志信はそれを聞くと唇を噛み締め、瞳で拒否を訴える。しかし元康が首を振ると諦めたのか、元康の着物に手を掛けた。
「……罰だと言うのであれば、仕方ありません。すぐに温めて差し上げましょう」
しかし元康は体を起こそうとする志信の肩を押さえて止める。志信が怪訝そうな表情を浮かべると、元康は意地悪な笑みを浮かべた。