しのぶ
第1章 1・光への生還
「忍びが感情を剥き出しにしては、もう終わりだな。だが……その剥き出しの矜持を捻り潰すのは、なかなか楽しみだ」
忍びは途端に殺意を剥き出しにした志信の口を素早く塞ぐと、体を抱き上げ城から脱出する。志信は縛られながらも暴れ続けていたが、勝負を決したと確信する忍びの前では、無駄な抵抗に終わった。
荒谷城は天然の要塞とも言える険しい山の上に立つ、堅牢な城である。しかしそんな城も針のように鋭く走る忍びは通してしまう。忍びは城から少し離れた辺りで志信を下ろすと、乱れた装束を荒く引き裂いた。
「んっ……んー!」
口を塞がれては抗議も届かず、志信の体は月明かりの下、下半身までもが露わになってしまう。忍びはまだ牙の抜ける気配を見せない志信へ馬乗りになると、胸の飾りをじわりとねぶった。
「っ!」
志信の体が、抵抗ではなく本能に震える。忍びを道を選び、さらには絶世の美形。予想はしていたが、志信は人を溺れさせるよう訓練されている体であった。
「感じやすい体というのも考え物だな。己の意志で使う分には便利だろうが、こんな時には仇となる」