しのぶ
第1章 1・光への生還
忍びがねぶり、甘く噛んでやれば、そのたびに志信の体は跳ねる。頬が赤味を差す程、向けられる殺意は鈍くなっていた。
「元康にもこの体で取り入ったのか? これだけ具合の良い体なら、元康のような若造はすぐに溺れただろうな」
だが元康の名を出すと、瞳にたちまち光が戻る。志信が元康に抱く忠義は、忍びというより武士に近いものがあるように見えた。
「面白い。その瞳、いつまで元康を見つめていられるかな」
忍びは手を胸から腿へとなぞらせ、膝を抱えると志信をうつ伏せにする。そして尻を高く上げさせると、後孔に舌を潜らせた。
「ふぅ、んんっ!」
志信の内腿に力が入り、侵入を拒もうと尻が揺れる。だが忍びは腰を抑え、緊張しきったそこを解していく。舌と一緒に交わり、熱く孔を濡らす唾液の淫靡な音。内側をもどかしく這い回る蛞蝓のような感触に、欲望が志信の半身をもたげる。忍びはそこをすかさず握ると、子どもを宥めるよう優しく撫でた。
「俺も色事には少々詳しくてな。元康や殿よりも、俺がないと満足できない体になったら謝ろう」
欲望を少し擦れば、忍びの手は濡れ始める。元康の名も、志信の体を走る期待を遮る盾としての力を失いつつあった。